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のた撃て ※
monogatary.comからの転載。
お題「のたうちまわる!」
***
「キツネはコンコン タヌキはぽんぽこぽん♪」
俺の恋人は歌に対して常人の斜め上をいくところがある。奇才なのだろう。俺も毎回、気付かされてばかりだ。世の真理というやつに。
「ね~こは」
こたつで?
「いっぬでのたうちまわるっ」
「なんだ、その歌は」
「動物合戦の歌」
俺には、有名な雪の童謡 に聞こえたけれども、それは俺の先入観のせいだろう。こういうところが頭が固いと言われるんだ。つまらないだなんて思われたら、夜しか眠れないつもりで夜寝ない影響 で朝はやり過ごして、昼に寝てしまうかも知れない。
「いぬ嫌いなのか?」
「なんで?」
「のたうちまわるとか言うから……」
子犬みたいなやつのくせにか?俺はネコ派だが……何故かどういうタイプが好きかといえば、それははっきり分からないが、結果としては子犬みたいな彼を好きになっていたのだから当てにならない。
「いや、そういう歌詞だから」
違うが……と言ってしまってから俺は口を噤む。頭ごなしに否定から入る。これは良くない。まず自分の常識を疑ってみなければ。固定観念と、先入観を。
今はまだ若いから自覚できただけいい。年老いて慣れてしまったら、頑固老人になっていたかもしれなかった。
俺は一度自分の頬を両手で打った。
「オレいぬ好きだケドね、最近ねこにハマってる」
「俺は逆にいぬがかわいいと思ってきたよ、最近」
「この前ね、毛がもふぁ~って長い白いネコの動画見つけたんだケド、オマエに似てた!」
彼は俺にその動画を見せてくれた。投稿チャンネルに加入しているし、動画にもハートマークを付けている。
毛足の長い白いネコは大柄で、目付きが鋭く、トラやライオンを思わせる。これが俺に似ているというのは褒め過ぎだ。
「ここの窓際でぽけ~っとしてるのに急に膝乗っかるとことか、っぽくね?」
彼はマイペース。人懐こくて友人も数多くコミュニケーション能力も高い。俺ばかりが好きで俺の告白も気紛れに受け入れて、友達の延長として付き合ってくれていて、まだ俺の片想いだと思っていたけれども、彼なりに俺を見て、彼なりに俺の人物像があったのだ。
「オマエはツンデレさんだからな」
彼は少し勝ち誇ったように言った。
「ツンデレ……」
「オレのコトめっちゃ好き好きなんだろ。隠してたって丸分かりだからな」
彼の歌ではねこだかいぬだかがのたうちまわったらしいが、俺は彼でのたうちまわった。
***
980字弱。
その歌は著作権の期限切れてるかと思ったら切れてなかったのでちょっと語呂ぼかしてある。
2022.11.9
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