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薫るブラウン ※
monogatary.comからの転載。
お題「明日早起きしてみたくなる物語」
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宅飲みして、アイツの家に泊まったのは覚えてる。1人だけベッドに寝るのは悪いからって言って、でもヤツは神経質で潔癖なトコあるから多分自分以外にベッド使われるの嫌だろうし、2人で床に寝たのは覚えてる。オレだから嫌……ってコトはないハズ、多分。
部屋に暖房入ってたしこたつもあったから、さすがにスイッチは切ったケド、布団なくてもそんな寒くなかった。
酒入ってたから結構寝た気がして、起きた頃にはなんか外が白かった。グレー寄りの白っぽい感じ。スマホみたらまだ6時前だった。ヤツのパパンもママンも妹ちゃんもまだ寝静まってる時間だと思う。できるだけうるさくしないようにしたケドどうだかな。
ヤツはどうしてんのかな、って探したら、ヤツはベランダに立ってた。レースカーテンの向こう側で、早朝だから空も白くて、きょうはきっと曇りだって思ったケド、それよりも、神々しくて怖くなっちゃった。神々しいのに怖いって、なんかヘンだな。
「どした……?」
オレは怖かったケド声かけた。お化けみたいなんだもん。
「起こしたか」
ヤツは振り返って寝転がってるオレを見下ろした。手にコップ持ってた。いや、おしゃんてぃーに言うとカップ。マグカップっていうとカップカップになるらしいやつ。
「違うケド、何してんの?」
「日課だよ。庭の木観ながらコーヒー飲むんだ」
「は?」
二日酔いしてんのかなオレ。あんまりそんな気しなかったケド。
「みんな寝ているのに、俺はすっきり起きて、コーヒーを飲んで、一足先にこの日を楽しむ。なんだか優越感と、達成感があるな」
早起きマウントってコト?いっぱい寝れたほうが良くね?真面目で丁寧に暮らしてる意識高いヤツの言い分はまったく分からんね。
「お前もやるか?」
よく分からない、ケド、興味はまぁまぁある。つまらなそうだケド。それが分かる感覚ってやつに。あこがr―興味が。
「オレ コーヒー飲めないもん」
「ココアかレモンティーかほうじ茶ミルクティーならあるが」
「んじゃココア」
ココアが飲みたいだけで。
ちょっとまだ暖房の設定温度も低くて、こたつも切ってあって、ほんのちょっと涼しいくらいが心地良い季節。
ベランダから柿の木を観て、四季ってやつか……って自然に想いを馳せて、あっついカップ持ちながら、世の中のおっかない事件とか忘れて、やらなきゃいけないことちょっと引いて考えてみたりとか、できる時間なのかもなって、ヤツの気持ちを探ってみた。
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1000字弱。
剽軽お調子者×優等生眼鏡
2022.11.11
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