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マーブルオフホワイト ※
monogatary.comからの転載。
お題「100人VS1人」
***
世界を敵に回しても君の味方でいる、的な歌詞はよくみる。君が味方にいれば何も怖くなくて、何でもできるような気がする。その気持ちは、分かるんだ。
どういう敵対関係なのかは、まず気になる。言い争いで済むのか、将又 、殺し合いなのか。
「難しいカオしてどしたん?」
こたつに入って対面、みかんを剥く彼が首を傾げている。
「食うか?」
白い繊維を剥ぎ取って、丸々みかんをくれたけれど。俺は首を振って、考えていたことを話す。
「いや、それはオレはとりあえずおまえの味方するケドさ、まずおまえを説得するね。どーゆー状況かにもよるケドさ!」
彼は変わらない。周りと打ち解けられない俺を気遣ってくれるのはいつも彼だった。
「でもどうしてもダメなら、そのときは仕方ないよな。オレはオレなりの意見持っちゃうと思うし、でもおまえにどうしてもって押し付けようとは思わない」
「そうしたら折れるかもな、俺は。お前を敵に回したいとは思わないよ。もしそれが命懸けなら――」
――悪夢かも知れない。俺たちはデスゲームに巻き込まれていた。100人でターゲットになった1人を殺すらしい。その1人は、武装を許される。銃火器の講習を受けたけれど、それでもこんなもの、この国で育ったら、使い熟 せるはずもない。
家族や自分の命を人質にとられた100人は、死に物狂いで俺を殺しにくる。99人か。いや、彼も家族と、自分の命を人質にとられている。あの日の空想が、たったひとつの音楽で広がった妄想が現実になってしまった。
人殺しなんてしたことはなくて、俺は暫く逃げていたけれど、制限時間が設けられてからはもういけなかった。
俺は危険を承知で彼を探し、そしてようやく見つけたはいいけれど……
彼は死んでいた。殺されていた。彼は裏切り者にされて、俺の釣り餌にされて、首はもう身体と繋がっていなかった。
周りへの説得を試みたんだね。こういうことが過去にもあったような気がする。彼はその為人 で、そのときは大事にならなかったのに。
セカイヲ敵に回したのは、俺ではなくて君だった。
――
「泣くなよ。寝る前に変な話するの、もうやめようぜ」
それは死後のセカイか、現実か。こたつがあるのが俗っぽい。
「お前が敵でも構わないから、そのときは、俺のことは忘れて、シアワセニなってくれ」
揺れていく彼 は賞品で、この仮想世界 は、瀕死の俺の命ごと終わりゆくみたいだ。
***
997字。
2022.12.7
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