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誤縁に注意 ※

お題「雑煮系男子」 monogatary.comからの転載。 ***  草食系男子、肉食系男子、ロールキャベツ系男子、色々ある。最近は雑煮系男子というのが急増しているらしい……らしい。 「お前のことぢゃね」  彼との共通の友人から教えられた。 「お前のことだよ」  俺と彼との付き合い方をこいつは知っている。いいや、彼から筒抜けになっているのだろう。訳知り顔で俺たちを語る。 「透明感があって、あっさりしてるけど、本心を見せなくて、付き合うとべったり。簡単には離れない……まさにお前ぢゃん?」  透明感?あっさり?俺が? 「言うほど俺のことか……?」 「いえす、いえす」  彼と同じ同意の仕方が何故だか腹立つ。仲が良いのは良いが、俺も無邪気じゃない。いつからか?愛していればすべてを赦せていたのはいつまでだったか?彼に感化されることなく俺の陰険度合いは上がっていくばかり。 「ンま、()いちゃんの家は白味噌だからね、雑煮。透明ぢゃないんだな」  昔の将軍は相手の細かな言い回しから真意を見抜いたというけれど、これもそうなのか。実は最初から暗示されていて……いいや、この場合は明示だけれど……後から気付いて、答え合わせをすることになるのか?一挙手一投足を疑ってしまうほど、俺はまったく、こいつを信じていない。では何故一緒にいる?彼の親友だから。彼に色目を使うな。牽制しておく必要がある。 「白く濁った汁の中で溶けて……グッとな。あっはっは」  その笑いは聞き流していいものか。 「水面化で」  聞き流しても……―― ――俺は雑煮系男子。嫉妬心を底に隠す。  彼はあいつと遊ぶ頻度が増えた。俺は恋人、あいつは親友。あいつとはできなくて俺としかやれないことがあって、けれどあいつには言えて俺には言えないこともあるはずで。  それを彼は誤解していないか?恋人は俺だ。彼があいつの前でなんでもかんでも話せるのは親友だからだ。彼が俺のことで悩むのは俺が恋人だからだ。 「どこに行くんだ?」 「誰かと一緒なのか」 「着いたら連絡しろ」 「帰りは何時頃になる?」 「迎えに行こうか」 「しつこいよ」 「なぁ、最近、怖いんだケド……」 「たまにはちょっと、一人に……してくれん?」 「オレ、自分のことはさ……自分でできるから……」 「大切なんだ」  俺は雑煮系男子。透明感を持って、あっさりしているらしい。俺は彼に纏わりついて、離さないことにした。 「でもよ、」 「大好きだからな。絶対、放さない」  俺は雑煮系男子だから、焼きもちが君の喉に絡まることだって、無くはないよな。 *** 2023.1.5

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