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簾髪 ※

monogatary.comからの転載。 お題「水も滴る〇〇」 ***  あんまこの仕事慣れてないかもな~って思った。  ジンモンするらしい。ジンモンが何か分かんなかったケド……  前連れて行ってもらったときはバケツで水をかけてから、オレもそれにならって水をかけてみた。  なんかスゴク悪いヤツらしい。たしかに目つき悪い。めっちゃイケメンなのにもったいなぁ。こんなイケメンだったら、オレなら悪いコトしないで女の子と遊ぶのに。  ぽたぽた水が落ちて、またオレのコトにらんでる。 「さっさとブツをどこに隠したのか吐けよ」  ブツがなんなのかオレも知らないケド、殺さないてーどにノリでやっておけばいいって。でもオレはやっぱり頭悪いから殺さないてーどが一番むずかしい。  だってトンカチ使ったら多分死ぬじゃん。 「なぐるぞ!」  殺しちゃいけないてーどが一番むずかしいから、指輪は外した。頭小さくてほっぺ薄そうだから多分コイツすぐ死ぬ。ウサギみたいだもん。  殺さないてーど……殺さないてーど……  これがやっぱ激ムズだった。ぽちょって音して、なんかもう当ててるだけ感。だって色白くて痩せてて目つき悪くてイケメンで、雪みたいだもん。イケメンだからムカつくし、よーしゃしなくていいんだ!って思ってるうちはよかったのに。  コイツはムダなのに、パイプイスをがちゃこんがちゃこんしはじめた。オレがきっちりしばっておいたからムダだぜ。 「お前、面白いな」  悪いヤツはオレがしばったひもをほどいて、ふつーに立ち上がった。  オレはコイツを殺しちゃいけない。でもコイツはオレを殺してもいい。今のじょーきょーってヤバない?これめっちゃ、ヤバない? 「一緒に来い」  オレは仲間よぼーと思った。でも口開いたら、コイツが、 「俺のツレにする」 ……ってめっちゃいい声で言って、オレはコイツを殺しちゃダメだからなぐれなくて、だからコイツはオレをいいようにする。   水がぽたぽた落ちてきて、コイツはオレのくちびる食べる気だった。どう考えてもオレのほうが不利。こんなバイト受けるんじゃなかった。    オレはくちびる食べられたかと思ってブワワ……って寒くなっちゃって、こしが動かなくなっちゃった。  白ウサギだと思ってた悪いヤツは白ライオンだった。オレはひょいっておひめ様だっこされて、ばたばたしたケドはなしてくれなかった。  殺しちゃダメって言われたから殺しはしなかったけど、オレがぽちょってなぐったから、頭がおかしくなったんだ。 *** 2023.2.2

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