98 / 178
【9000アクセス記念】ストベリボーイ
※全年齢の割に下ネタ(?)テイスト
***
あからさまな物言いというか、露骨な単語は、やっぱり恥ずかしい。思うのならとにかく、口にして、自分の声で聞くのが一番、何か、禁忌に触れるような畏れがある。
とはいえ、純情ぶらずとも、やることはやっているのだけれども。
そういう心理は俺だけではないのか、数々の婉曲表現や比喩があるわけだけれども、ときにそれはあまりにも認識に結びつき過ぎて、直接的であったりもする。そしてそれを聞けば、連想ゲームは容易くなったりするわけだ。
「ゴムやるよ、ゴム」
不埒な俺はぎくりとしたけれど、目で見て理解した。
彼の髪が伸びてきているな、とは思った。前髪を下ろすと幼く見えて、これはこれでいいと思うのは俺の都合。相手は実生活の中で、その毛先を鬱陶しがっている。かといって、まだ理髪店に行く予定もない模様。
彼が差し出したのは、女児が使うようなイチゴのワンポイントの付いた髪ゴムだ。
「2つ付いてきたからやるよ。かわいいだろ」
彼はよく心得ているし、頓着がなかった。けれど俺にはある。陰気で暗い俺がそんなイチゴの髪ゴムを使ったところで、イタいやつだ。
「似合うと思うぜ、ギャップ萌え。それにお揃 だし」
この言葉に俺は弱い。指輪なんて付けるのは仰々しいけれど、マーキングしておきたいのは男の性 だと思う。けれどペアルックもなんだか……体型や雰囲気が違う俺たちの、この差を無難に埋めるファッションなど限られている。
「そ、そうか……」
そういう物は、告白同様、俺から渡してみたかったけれど、彼から貰うのも嬉しいことには変わりない。
そんな会話から数日。
彼は慌てて俺のところにやってきた。
「ゴムない?」
ゴム、と言われてまた俺は戸惑ってしまった。二者択一。髪ゴムか、はたまた……
それはゴムでなくてもそう呼ばれる。
俺たちの距離が0になることはない。それは切ないことではない。俺にとっては。企業努力の薄い隔たりで断ち切れるほど、その柵 は甘くないはずなのだ。真っ当な関係なら。
男同士、だから逆に外す理由がないくらいだった。少なくとも俺には。
つまり俺がそれを欠かすはずはなく。
「さっき風呂場に置いてなかったか……?」
素直な目は、瞬時に思い出したことを俺に伝える。
「そうだった!さんきゅ!」
俺たちは閉鎖的な仲だ。だからいいのだろうか?いやいや、話し合うべきだ。野暮だろうか?
今夜はそこのところ、話してみるか?なんて意気込む。
***
於fujossy9000アクセス記念。
チェリーボーイの派生か?
2023.5.6
ともだちにシェアしよう!