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サメ肌師のヂレンマ ※

monogatary.comからの転載。 お題「鮫肌」 ***  すれ違って、袖捲ってたソイツと腕がぶつかった。さらってしてる。大福餅が掠ったみたいな。別に粉吹いてるとかじゃないケド。 「あ、悪リ」  オレは立ち止まって振り返った。そしたらアイツも同じように立ち止まってオレのこと睨んでた。角張り眼鏡がさらにアイツの目付きを悪くする。 「ンな怒んなよ。悪かったって。オレのサメ肌がご自慢の柔肌を削ってキズ付けちまったか?」  でもアイツはオレのぶつかったところをじっと見てた。 「ハンドクリーム塗るか?」 「は?」 「荒れているみたいだから」  アイツはハンカチ出すみたいにポケットからハンドクリーム出してきて意識高かった。ハンカチだって意識高いのにな。 「え、いや、いいよ。悪リぃし」 「いいならいいが。痒くないのか」  神経質だな~神経質だな~っていつも思ってたケド、マジで神経質なんだな。 「別にいつものコト~。一昨日ちょっと炎天下で酒飲んでたからそれぢゃね?知らんケド」  オレはちょっと荒れ気味なそこぽりぽり掻いたら、めっちゃイヤなカオされた。 「貸せ。塗ってやる」  有無を言わずにオレは腕鷲掴みにされて、オレはクリーム塗られた。女子が使うやつみたいにぷわって甘い香りするかと思ったけどしなかった。でもちょっとだけいい匂いする。 「こういうのイヤなんかと思った」 「見ているほうが嫌なんだ」  短く切り揃えられて磨かれてる小綺麗な爪に、ちょっとささくれできてるのがめっちゃくっちゃ神経質っぽかった。手はしっとりしてたケド、汗ばんでるワケじゃなくてすべすべしてた。オレの腕のかっさかさが際立つ。 「あんがと」 「いや、俺の自己満足だから」 「でもさんくす」  いいやつだな~とか思ってたら備え付けのウェットティッシュで手を吹き出したし、席を外したから手を洗いに行くんだろうな~って思った。そういうヤツだから別にオレは気になんないケド。  意外と面倒見がいいんだよな。アイツはすぐに戻ってきた。入り口のところのアルコールスプレーも手の甲で押してる。この一連の手間もオレの世話してくれたからなんだよな。 「悪かったんな。嫌だったろ、人のコト触んの。でもあんがと」  アイツはちょっと、「え?」みたいなカオしてた。 「おまえが俺がこんなでもイヤな顔をしないだろう。すまなくは思っているけれど、だから、安心できる」  なんかコイツ、変なもん拾って食ったんかな。いつもと違って素直で変な気持ちになった。 *** 2023.3.28

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