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妄とけ想 ※
monogatary.comからの転載。
お題「妄争」
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チュウしてぇなぁ~って思ってカオがにっちゃにちゃにニヤけていた。
「ん~マッ、んマッ、んマッ」
腕の内側の柔らかいところがちょっとチュウの感触に似てるらしいから、そこにちゅっちゅっやってたオレはそ~と~キモかったと思う。
でも柔らかさもそうなんだけど、アイツに塗ってもらったハンドクリームとか、使ってる洗剤とかと相俟って、オレの肌、結構ふんわりいい匂いした。あんまり汗かかないタイプだし。肌すべすべだ。
アイツが潔癖性の綺麗好きの神経質ってコトもあって、脂ぎってて汗臭くてベトついてるのは嫌ってるのもあるから、オレもそれなりにケアしてるし気を付けるようにはしてるケド、とはいえアイツも男だから、そら女子と比べたら皮脂は多そうだよね。そんなコトないのかなぁ。無さそう。眼鏡に曇りひとつもないもんな。
「ん~マッ」
腕にちゅっちゅやってる姿は、はたから見たら奇行なんだろうね。
"適当"な相手がいるなら相談してみればいいじゃんって話なんだケド、アイツが綺麗好きで潔癖性で衛生観念に口煩いコトは百も承知だし、それがヤツって人間を構成する要素なら否定はしないよ。むしろ尊重したいね。イケメンに生まれちまったら、高みを目指さなきゃならないワケ。だから顔面の造形にあぐらかいてちゃいかんのよ。カワイイ系なら尚更。美しい果実でも中が腐ってちゃ仕方ない。
オレは内外問わず"イケメン"なんでね。
「ん~マッ!んマッ!」
素直に「チュウしてくれないか?」って、相手がアイツじゃなかったら、こんなきゅるるん系イケメンなんだぞ、悩むことはなかったよ。二つ返事だったろうさ。けれど生憎、いやいや、天から二物も三物も与えられたがゆえの試練というやつで、オレの惚れた相手はヤツだから、断られると分かってて求めたら負い目感じちまうだろ。
『ぶっチュウしてくれん?』
『嫌だ』
『いいだろ、少しくらい。減るもんじゃないし』
『嫌だ。減る減らないとか、そういう考え方も嫌だ』
――こんな具合にな。言い争いになっちまうワケだ。不快の範囲が広いアイツに選択権握らせて、そのあとの主導権はオレがいただく。それがコツ。惚れた弱み。
「何をしているんだ?怪我でもしたのか?」
ヤツが話しかけてきた。
「チュウしたい。無性に」
「気持ち悪いぞ」
「ンだってさ~」
「それくらい言え」
オレの目元塞がれて、でも影が濃くなって――……
こんなあっさり叶ったってか?今のオレの妄想なんか?
***
お調子ナルちゃん×眼鏡くん
2023.4.25
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