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プリテンドの螺鈿 ※
monogatary.comからの転載。
お題「戦闘力2」
***
駅前でなんか騒ぎになってたから、何?って野次馬根性が働いたワケ。
オレそういうの興味ないから~みたいなスカしてるオレ括弧みたいなのは逆にダサくなる年頃。
どんどん世間サマに興味出していこうな。
覗いたら、カノジョをパナンされたカレシが怒ってんのかなって思ったケド、カノジョとカレシの服装がなんか釣り合ってなくて、非モテ男がレンタルカノジョでも雇ったんかなって思った。で、非モテがレンタルカノジョ買ったところで、なんで野次馬になってんの?って。
レンタルカノジョ、黒いバックあった?って感じでなんかチンピラみたいなのに絡まれてた。
非モテのほうはよく見たら大学でよく見る地味眼鏡くんだったし。戦闘能力2くらいだろうから、さっさとボコられて解散でいいと思いま~す。
でもなんかレンタルカノジョのほうが地味眼鏡の背中に隠れてて、これホントに釣り合ってないカップルなんぢゃね?って。だとしたらカノジョかわいいから、ここで恩売っておけばワンチャンあんぢゃね?
ダサい激弱のカレシなんか放っておけばいいのよ。
オレは身も心もイケメンなので、野次馬を掻き分けてカノジョを非モテから引き剥がした。それで野次馬どもに預ける。
戦闘力2くらいのガリ勉眼鏡の非モテくんじゃ、猫パンチのほうが強いって。あいつ等たまに爪立てるからな。
オレの乱入は相手の戦意を削いだらしかった。チンピラも野次馬も解散。
誰もいなくなって、猫より弱そうなヤツはオレを睨んだ。眼鏡が白く光って、眼鏡くんの目からビーム攻撃?
「……ありがとう」
声かっすかすで最初何言ってるのか分からなかった。で少し遅れて補正された。ああ、ありがとって言ったんだって。
「カノジョ逃げちまったケド?」
「あの人はカノジョじゃない。ナンパだ、ナンパ」
へ~、こんな童貞みたいなのがパナンとかしちゃうんだ、って思ったケド違った。流れが見えてきた。ナンパされてた知らん女の子助けたつもりがオレに助けられちゃったワケね。
「同じ大学だろ?あんた。弱っちいならあんま首突っ込むなよ。ご親切ってのは強いヤツの専売特許。施しなんだから。弱っちいヤツがやるのは厄介事増やすだけだぜ」
ヤツはオレに背中向けちゃった。白くなった握り拳が震えてた。
「俺はそうは思わない」
自分が弱っちいなんて、認めたくないもんな。
「そんな世の中は嫌だから」
「身の程を知れよな」
悔しそうに俯く横顔が、なんでか目蓋の裏に残ってムカついた。
***
加虐的片想いがはじまる。
2023.5.3
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