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通り風 ※
monogatary.comからの転載。
お題「誰にも言えない恋をした」
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クラスが変わって約3ヶ月。もうすぐ夏休みだ。学校は嫌いではないけれど、通学・帰宅の手間を考えると休みは楽だし、夏の、「日本の和」というか、あの独特の雰囲気が嫌いじゃない。待ち遠しいというほどでもないけれど。例年はそうだった。
俺の目は気付くと吸い寄せられている。教室に戻ってきた彼に。
いつもは隣の窓から校庭を見ていたのに。バックネットに透けた住宅街とか。今は反対だ。室外側ではなくて、室内側。一挙手一投足が気になって、しまう。
きっかけは間違いなく文化祭の会議。急に振られた。話を。初めて喋ったわけではないけど。不意に。だから驚いた。俺の出したお化け屋敷浴衣喫茶が通ってしまった。お化け屋敷とメイド喫茶で意見が割れていたから折衷案のつもりだったのだけれど。滑りかけてシラけかけた俺の案を盛り上げたのは彼だから、実質の手柄は彼だ。
その話はクラスの中心的な男子と女子が決めている。それはおそらく青春的なコミュニケーションなのだろう。今はまだ実感も湧かないが。
彼はいちごミルクの牛乳パックを持って、隣の席のやつと談笑していた。背中を見つめてしまう。制服のシャツの下に着た半袖シャツのプリントが透けている。
こういう感覚は、あまり慣れない。昔、近所の大きなお姉さんというやつに仄かに抱いた感覚と似ていないこともないけれど。つまり俺は異性愛者のはずだったわけだ。女子を可愛いと思う。男子に対してこれという感覚は別に抱かない。だがそれでいうと女子に対してもそうだった。俺にもセンスや美意識というものがあるから、女子の"イメチェン"という革新派な行動に対して似合っていなければ内心、お節介な助言が湧かないこともない。口にはしないが。
つまり俺は同性愛者ではないのだ。かといって異性愛者だと断言するには、その経験も乏しい。つまり同性愛者でも異性愛者でもなかったかも知れないところに彼が急激に俺の意識に現れたから厄介なのだ。多数決制にしてしまえば断定できるものなのか?
こういうことは、誰かに相談するものなのだろうか?自分が何性愛者か理解しているか、確信しているか、疑ったことはないかって?比率の多数決で決めることはあるかって?
ばからしい!そんなことを人に相談してどうする。そんなことを……
「ま、――なんて考えるより感じろってカンジで、ね~」
彼が俺の傍を通った。マリンブリーゼの爽やかなシトラスサボンを残して。
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シーブリー◯が青春の香りなんや
2023.7.1
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