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青をsee ※
monogatary.comからの転載。
お題「制汗剤が漂う体育のあと」
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青春というものに、青春真っ盛りにいる人間は気付かないのだろう。俺もそうだ。過ぎ去ったことを綺麗にまとめたくなる。否定できればそれはそれで苦しくもなるから。もちろん、納得のできない諍いもあるけれど、トータルでいえば俺にとって高校生活は、地味で陰気で目立たないなりに楽しいものだった。それは今と比べて、なんて消極的なものでもなく。
白い棒アイスを齧った。甘酸っぱい味がする。夏場に薄めて飲むケルピスは、アイスになっても美味しかった。アイスのほうが美味しいかもしれない。濃縮されていて。
夏の空は様々な顔をする。日が落ちていくのだな。少しは涼しくなるだろうか。昼間のブルーと、暮れなずむオレンジの色合いに、俺は高校時代を思い出す。
当時人気の液体制汗剤があって、匂いと色で種類が豊富にあった。俺はシート派だったから、それを傍目で見ているのみだったけれど、クラスの奴等は蓋を交換なんかして、蓋と本体で色が違うなんてのが流行りだった。友情の可視化なのだろう。曖昧なものだから。若い頃は怯えているのだろうな、孤立に。
叶わなかった恋というのは大体、綺麗に思う。相手をよく知らずに終わったこともあるのだろう。つまり恋人に見せるカオというものを。
あの制汗剤は匂いがする。匂いによって人は記憶を手繰り寄せるらしいけれど、意外にも俺は味覚と視覚によって、急な懐古に耽っていた。
体育終わり、着替えを終えて一気にクラスはあの清涼感のある匂いで満たされる。
別にケルピスの味は、あの匂いに似ていたはずもないのに、なんだか少し、甘酸っぱさというかヨーグルトみたいな風味と匂いが俺の中で引き結ばれたのかも知れなかった。
ブルーの蓋とオレンジの本体のボトルが俺の机にがつんと置かれて少しびっくりしたこともある。体育のバスケで俺と張り合ったクラスメイトだった。小柄ながらに俊敏なやつで、ムードメーカー。運動といえば彼。俺みたいなクラスの隅で陰気にやってるやつに何の用だろう?体育でのクレームを今更か?
「オマエ、めっちゃ強かったんだな」
彼は上半身を晒し無防備に制汗剤を肩だの胸だのに叩きつけていた。満面の笑みに白い歯が見えて、俺は気拙くなってボトルばかり見ていた。あの匂いは鼻の奥に住みついている気がするな。
思えば初恋だったのだろう。意外にも、あれが。そんなので。ちょろいんだ、俺は。
空はやがてバランスを崩して、なんともいえない色になっていた。
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それでいうとsea
2023.7.30
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