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ソルティ ※
monogatary.comからの転載。
お題「旅先のバス停」
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そこは心霊スポットだと、昼飯を食らった食堂の店主から聞いた。
動画撮影を生業にしている輩や、カップルや、或いは何かの打ち上げ後の高校生、つまりは若者たちが、そこに足を運ぶという。
特に用はなかったが、寄り道できないこともなかったため、俺も様子を見に行ってみることにした。
もしそこが第一の目的地であるのなら、夜に合わせていくのだろうけれど、生憎、俺がそこに着いたのはまだ日が暮れるか暮れないかという頃合いで、今は夏だから、まだ明るかった。
海に面した坂道にあるバス停だ。トタンでできた古びた待合所がついている。鶏小屋みたいだった。もう使われていない。つまりバスで通り過ぎてから、最寄りのバス停で降りて、歩いてまた戻ってくる必要がある。海の見える休憩所みたいな風情が、あまり心霊スポットとして似つかわしくない。
霊感はないほうだった。ないのが健全 だろう。有るというやつは何を根拠に言っているのか。
バスの中の涼しさを忘れて汗を拭いた。ペンキの禿げたベンチへ腰を下ろし、常温と化した茶を飲む。そろそろ塩飴も舐めておこうと袋を破った。
「それ、知ってる!美味いよな」
俺は驚きのあまり、身体が跳ねた。ビニール袋も鳴った。
いつのまにか、隣に人が座っている。俺のほうを見て、無邪気だった。野良猫に急に懐かれたような距離の縮め方と不気味さだ。
俺は人と関わるの苦手だった。喋るのが面倒臭いのだった。物を食うのとは違って、厄介に感じる。言葉を探すのも気怠るい。
無言で塩飴を差し出す。
「えっ!いいの?やったぁ」
俺より少し若いのか。高校生くらいに見えた。制服にエナメルバッグを下げているが、どこかスポーツマンの雰囲気があるのは小柄ながらに体格のせいだろうか。サッカー部か、バスケットボール部か、水泳部もありそうだった。だが最近は色々な部活があるからな。
「バス待ってんの?」
その一言で、俺は相手の顔を見つめてしまった。ここにバスは停まらない。こいつも心スポ巡りか?学校帰りに?地元民ではないのか?
「ここにバスは来ないだろう」
相手は妙な顔で俺を捉えた。口に放った飴が歯に当たる音がする。
「バス停は向こうだ」
後から聞いた話だ。部活中、先輩に腹を蹴られた1年が、あのバス停で体調不良に陥り、そのまま死亡したという。
人懐こげなやつだった。あのバス停で、ずっと待っているのだろう。
いいや、眠ったのかもしれない。あの塩飴を舐めたときに。
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2023.8.24
塩飴に除霊効果があるって……コト!?
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