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激まぶ! ※
monogatary.comからの転載。
お題「砂浜であちち」
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「あっち!あち、あちっ、あっつ!」
「じゃあこれは?」
「いって!いちち!」
友人2人と海に来た。海水浴場なんてところではないから、そう混んではいないけれども疎らに人はいる。
「こっち来いよ!」
体力バカ2人が、波打ち際で俺を呼ぶ。俺といえば、日傘に帽子を被って、サングラスと、UVカットのラッシュガード。海パンとサンダルだけの下半身がもはや無防備なくらいだった。日焼けは嫌いだ。痛いのもあるが疲れてしまう。奴等には伝わらんことだろうが、分からないなりの理解は示してくれているから付き合いやすいというのはある。
2人いるうちの片方が脱ぎ捨てていったサンダルを拾い上げ、合流した。
少し日光に晒されただけで、ビニール製のサンダルは熱くなっていた。
水色と翠色で視界が二分割されているようだった。湿った感じの岩壁といい、その上に生い茂る叢といい、夏の風情だ。ただ海の水も少し温かい。白い波が俺の足を洗っていく。
「サンダル!サンダルくれ!」
彼等はまだ熱砂の上で遊んでいる。
「取りに来い」
今はふざけているが、単純 に火傷をする温度だ。
色の変わった砂浜に、彼の足跡がついた。波が寄せ、埋まってしまう。
「うわ~、涼しい。でもお湯だな?」
「どっちなんだ」
サンダルを渡すと、彼は足を持ち上げて、片方ずつ履いた。
「来てよかったろ?最近、元気ねぇなって思ってさ」
白い歯が眩しくて、俺は目元を覆いたくなる。
君の笑顔が見たいだの、笑顔が素敵だの、くだらないと思っていたし、歌詞にしろセリフにしろ、ただの文字稼ぎだと思っていた。笑顔が素敵ってなんだよ、と。
けれどその意味が分かってしまったとき、俺も結局は大多数の有象無象とそう変わらない価値観の持主だと知るのだ。これはシアワセなことか?残念に思うべきことか?お前の笑顔で切なくなるっていうのは。
「悩みごとは波に持っていってもらっちゃえよ!」
「そうする」
「どしたん?」
ノってみたが、心配された。早くあいつのところに戻ればいいのに。
「好きなやつにどう迫ろうかと思って」
「ンなもん、当たって砕けろ以外にあるかよ。ダメだったらまた旅行行こうぜ。誘えよ」
落胆する資格もない。言わなければ伝わらないもんさ、いつだって。
「うっわ、あっち。アッチッチだな。眩しっ。甘酸っぺ」
「はぁ?なんだよ~」
向こうにいるあいつが急に騒ぎ出して、彼は俺に背を向け離れていく。
足跡は白波が掻き消していくのだ。
***
2023.8.24
→アイツ→俺→彼→だったらどうしよ。
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