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余炎でござんしょ ※
monogatary.comからの転載。
お題「とにもかくにも暑過ぎる件」
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もうすっかり店の品揃えはハロウィン仕様だというのに、外に出ると湿気が高く、もしかするとからりと晴れて気温の高い日よりも暑く感じられる。
昼頃に雨が降って、それから3時間ほど経つ。
もう秋なのだと知れた。天気が悪かったのと相俟って、すでに青を帯び、日が落ちてたのを強く感じる。
「あっち~。暑い。暑すぎ。とにも角煮も暑すぎる。酢豚に果物入れないで」
隣にいる恋人はアイスを齧っていた。首にタオルを巻いて。携帯扇風機を当ててやる。
「パイナップルは、入れるぞ」
「野菜も入れないで!」
「ニンジンは根菜だから入れていいということだな」
とはいえ今日は酢豚でも角煮でもない。厚みのある豚肉は買えたけれどステーキにする。
暑い夏は、料理も厄介だった。クーラーも点けているから、うちはIHだし、ブレーカーが気になるところだ。
「オマエは涼しそうだな。実はもう熱中症なってんぢゃね?」
熱中症。熱中症といえば。
「チュウするか?」
彼は少し寒くなったような顔をする。そういう涼は要らないか。
「急にどした?」
「チュウしようって、聞こえたから」
「言ってねぇわ」
日焼けしても、彼の肌は瑞々しかった。子供の肌みたいだ。内側にまで水分が行き届いているというのか。
「隙ありっ」
頬に柔らかいものが当たって、咄嗟にそこへ手を伸ばし、俺は立ち止まった。サンダルがアスファルトに擦れる軽快な音が耳に残っている。俺より背の低い彼が背伸びをしたのだった。
「しょっぺ」
俺だって汗をかく。彼は秒単位で消えたアイスの骨みたいな棒を咥えている。
「なんだよ。チュウしよって言ったのそっちだかんね」
飄々としているものだ。路地に入ったとはいえ外だった。公序良俗としての如何 は分からないが、気分としては悪くない。
「暑くなってきた。暑いな」
雨があって少し経つ。空は疎らな雲の奥でも青暗い。
そのなかにふと見つけた月は、人民の暮らしというものを覗いているようで、白かったのが金色に染まっている。
「もう秋だな……」
「何言ってんだ。まだ夏だろ。こんな、暑いんだぜ~?」
そう言いながら、買ったのはハロウィン仕様のものばかりなのだ。家の飾り付けだとか。
「食欲は秋に向かっている気がしたが」
「ちっげぇよ。そろそろそーめんも食い飽きてきたの!」
食欲が戻ってきたならいいことだった。暑いなりに、色々食べたな。
「どしたん?」
「夏を振り返っていた」
「早。9月も夏の延長戦ぢゃん?」
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2023.8.27
余炎と残暑を掛けているんですよ!
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