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散々サンサーラ ※
monogatary.comからの転載。
お題「3回目の転生先」
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ほんの話の機みだった。生まれ変わったら何になりたいか。よくある話だった。
輪廻転生。恐ろしいことだ。そしてこの構造を発想した者も、人生はろくでもなく苦しみに満ち溢れているという考えを持っていたのに、いつのまにか「生まれ変わり」には楽観的な思想がつきものになっている。
そのような徳が積めたか?
仏の顔も3度まで。ならば3回は赦されそうなものだけれど。
赦されないだろうな。俺は俺が思う開祖について、俺を赦してはくれないのだろうと思う。
罪に感じる。この想いが。
「生まれ変わったら何になりたいか」だと?
お前は受肉した閻魔大王だと思う。何の因果かと思った。何の天罰かと思った。見抜かれている。
俺は早く死んでやろう。この人生を終えて、2度目にまた俺をやる。
お前はその頃には結婚し、子供もいる、むさいおっさんになっているのだろう。
俺はお前の家の脇を通って、お前の妻の作った夕食の匂いを嗅ぐんだ。そして耳にするんだ、談笑を!家族の……
そして絶望し、俺はまた人生を終える!
3回目、自決を選んだ俺は虫に生まれ変わるのだろう。けれど執念で、どうにかアゲハチョウに。公園で遊ぶお前とお前の子供の周りを飛び回る。
そして羽搏き疲れた俺はアスファルトに寝そべって、何も気付かないお前に踏み潰されるのさ。誇りの綺麗な翅はぼろぼろになって、二度と空は飛べなくなって、生きることさえままならなくなる。だがそれでいいんだ。お前が俺のとどめを刺せば。
俺にはそういう人生がお似合いなんだよ。俺にはそういう運命 が。
セミやカでさえなかったら、お前が俺を慈しんでくれるって?そんなわけはない。
「オマエ、何泣いてんだよ。死ぬのそーぞーして怖くなっちゃった?マジに考えんなって」
彼は俺の気持ちなんて何も知らない。何も知ることはない。何も知らせない。けれどそれでいい。俺のくだらない恋慕 なんか、墓場まで持っていかれて、暗い穴倉に葬り去られてしまえばいい。転生なんて、ごめんだ。恐ろしい話だった。
「別に、泣いてない……」
「泣きそうだったもん、ウソ吐くな。しゃーない。生まれ変わったらオマエの兄ちゃんになってやるよ」
そうだ、傍に居られるのならいいのだ。彼が俺を慮ってくれた。きっと輪廻の螺旋は永くて、けれどこの一瞬は必ずしも無でないのだろう?
「死んだら、"無"なんだ。生まれ変わりはない」
「じゃあ、スキって言えよ。二度目、ナイんじゃあさ」
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2023.9.23
悲観に酔ってるニキ
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