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第7話 友達?

 ――――…正直、頭の中は、パニックだ。  パニックの頭のまま、シャワーの音が止まった事だけはどうにか認識できた。さすがに倒れているままではオカシイと思い、何とか起きあがって、バスルームから出てきた郁巳を待つ。  タオルで髪を拭きながら。  郁巳はリビングの入り口で止まった。 「…ごめん、泰誠――――… びっくり、したよな?」 「…ああ」 「…悪い」  離れた所で、ふ、と笑んでる郁巳。  ――――…このまま寝るわけにもいかないと、思った。 「……郁巳、座って」 「ん? あ、うん?」  素直に歩いてきて、オレの目の前に座って、首を傾げる郁巳。  こうなったら。  とりあえず……力業で押し切ってみよう。 「あのな、郁巳。 …お前が、オレを好きなんて、絶対勘違いだと、オレは、思う」 「…ん…?」  何か言おうとした郁巳に、泰誠は小さく首を横に振った。 「黙って、聞いて」 「…うん」  郁巳が素直に黙ってくれてホッとする。そのままつづける事にした。 「お前さっき、襲われてもいいとか言ったけど…… まじめに考えてみろよ。 無理だろ? 男に襲われるなんて、ありえないだろ?」 「――――………」 「オレも、お前の事が好きだけど…。一番、好きだし、ずっと一緒に居たいって思うし。多分お前に彼女とか出来たら、嫉妬したりしてしまうかもと思う位、お前の事、好きだけど…。 でも、やっぱりそれは、ちがうと思う」 「――――…」  多分何か言いたいのだろうが、言わずに郁巳は黙って、聞いてくれていた。 「恋愛感情ってさ…お前、オレにドキドキしたり、する?」 「――――……ドキドキ…?」 「恋愛感情の好きと、友達の好き、て… そこが一番違うんじゃないか? ドキドキしたり、…もっと言ってしまえば、ほんとに性欲感じたり…」 「――――………」 「…それはないンだろ?」 「――――……んー…」  歯切れの悪い返事。 「……あるのか?」  ここで、ある、なんて言われたら、もうどうしていいか分からないけれど。 「……んんー………ない…かな…」  郁巳の口から、そう漏れた瞬間。  よし!と思った。 そこにたたみかける事にする。 「だったら、恋愛感情じゃないって。お前がオレの事、好きだって思ってくれてんのは嬉しいし…オレもお前が好きだし」 「――――…」 「友達として。 すごく良い関係なんじゃないか、オレ達」 「――――……友達、として…?」 「そう。友達として」 「――――……」  泰誠の言葉に、郁巳は黙って。  しばらくじーーっと泰誠を見つめた後。 「…そう、なのかな?」 「そうだって、絶対」    絶対と言い切ることで、押し切ろうと頑張ってみる。

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