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ここ、どこ?
「ヤマ、ヤバい。腹いっぱいで死ぬ。俺、どっか散歩してきていい? 消化してくるわ」
「いいけど……大丈夫? 瑛ちゃんひとりで。方向音痴じゃん」
「大丈夫だって。どうしても困ったら電話するわ」
「気を付けてよ。俺、この辺で写真撮ったりしてるから」
山本とビーチで別れて、当てもなく気分で進み始める。それから5分も経たない内に、自分が歩いて来た方向がどっちなのか全くわからなくなっていた。しかし、そんなことをいちいち心配する性分でもない。どうしても困ったら、人に聞くか、山本に電話をすればいいのだし。
そう思って、気にせずどんどん歩く。辺りが段々と夕焼けに包まれ始め、もうすぐ日没が来ることを知らせていた。ふと、観光客らしい人影がなくなり、閑静な住宅街に迷い込んだことに気づいた。
ここ、どこ?
尋ねようと思っても、辺りに誰もいない。さわさわと街路樹が揺れる音が聞こえるだけだった。さすがに少し焦って、山本に電話をしようと短パンの後ろポケットに手をつっこんで携帯を探す。
あ。
携帯を持ってきたと思い込んでいたが、夕食の時にポケットから出して山本の鞄に財布と一緒に入れてもらったままだったことを思い出した。どうやら山本もそのことをそのまま忘れてしまっていたらしい。
仕方がないので、どこかの家を訪ねて聞いてみようか。そう思い辺りを見回す。
よく見ると、どの家もかなり大きくて、いかにも金持ちが住んでいます、という風情の建物ばかりだった。ここはもしや、あのダイアモンドヘッドの頂上から見えた高級住宅街ではないかと思い当たった。とすると、カハラとかなんとかいう地区ではないだろうか?高級地だとホテルにあったガイドブックに書いてあった気がする。
高級住宅街なら変な輩は徘徊していないだろう。とりあえず治安的には安心できそうだ。だけど、こんな英語も喋られないアジア人の男が突然訪ねたりしたら怪しまれるかもしれない。
まずは山本と別れたビーチを自力で探してみようと、瑛斗は来た道を引き返すために歩き出した。
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