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全て、刻む ★

 そっと相良の左手が伸びてきて、瑛斗の頬を包んだ。親指でゆっくりと頬を撫でられる。そのまま引き寄せられた。唇が重なる。相良の唇に何度も唇を優しく挟まれる。刻まれていく、相良の感触。  唇が離されて目が合った。相良は無言のまま瑛斗の手を引いて、ベッドへと向かった。瑛斗を抱き上げて、そのままベッドへと下ろす。バスローブの紐を解き、瑛斗の裸体が露わになった。相良は瑛斗の上に跨って、しばらくじっと瑛斗の体を見下ろしていた。その注がれる熱くて優しい視線に、瑛斗は耐えられなくなって、体をよじった。 「見過ぎだって」 「俺も覚えておきたいから。瑛斗の体」  だから、こっち向いて。そう言われて、瑛斗は恥ずかしさを押し殺しながらまた正面を向いた。再び目が合う。 「……綺麗な体だな」  そう呟いて、相良がゆっくりと瑛斗に覆いかぶさってきた。長く、甘いキスのあと、瑛斗の体の1つ1つに相良が唇を這わせていく。瑛斗は目を瞑ってその感触を胸に刻んでいった。  額、まつ毛、鼻、頬、顎、耳、首、鎖骨。徐々に下りていく、相良の唇。相良が、胸の突起を口に含んだ。 「あっ」  散々弄られた瑛斗の体にはまだ相良との情事の余韻が残っていた。ほんの少しの刺激でも体が強く反応する。そのままじっくりと時間をかけて、突起を攻められた。空いている手で、もう片方の突起も弄られる。 「んっ、あっ、あっ、んんっ」  体が再び熱くなる。腰が疼いて、持ち上がる。あまりの快感に叫びそうになるが、羞恥心が勝ちなんとか声を抑えた。浴室で散々大きな声を上げたくせに。こんなに感じる体になってしまった自分が、それを相良に知られることがとてつもなく恥ずかしく思えた。 「んっ、んんっ、あっ、んっ」  抑えられるギリギリのところで、堪らず喘ぐ。  相良が動きを止めて、瑛斗を見上げた。 「瑛斗」 「……ん?」  快感の波に意識が朦朧としながらも、なんとか相良の声に耳を傾けた。 「声、聞かせて」 「……だけ……ど……」 「我慢しないで、声出して。瑛斗の声、聞きたい。声も全部覚えておきたいから」  再び相良の愛撫が始まり、優しく瑛斗の自身が口に含まれた時。  瑛斗の羞恥心も理性もそこで一気に飛んだ。  そこからは。自分の欲のままに相良と交わった。細胞の1つ1つまで味わうように、お互いの体の隅々まで触れ合った。声を抑えることなどもうどうでもよかった。  我を忘れるほどの気持ちのよい交わりなのに。浴室での激しかったセックスとは違い、穏やかでゆったりとした、それでいて体の中がじんわりと燃えるような、心地の良いものだった。時間をかけてゆっくりと求め合った。抱き合う間、ふたりは何度も存在を確かめるように見つめ合い、唇を重ねた。  明け方近くになり、瑛斗の体力の限界がきた。体を綺麗にしてからベッドに裸のまま潜り込む。相良の腕にぎゅっと包まれた。瑛斗はその相良の温かい体温を感じながら、安心して深い眠りへと入っていった。

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