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エピローグ ③

 本物の相良だ。  太陽の明るい光に包まれて、優しい顔で佇む目の前の男。もう、堕天使にも悪魔にも見えなかった。 「やっと、顔見れた」 「……なんでここに?」 「だから、瑛斗に会いたかったから」 「だけど……」  しばらく見つめ合う。すると、相良がゆっくりと口を開いた。 「……俺な、本当はあの時、車で瑛斗を送った時、瑛斗を引き留めようかと何度も思った」 「…………」 「だけど、瑛斗が言ったみたいに、瑛斗にはこっちの生活があるから。家族もいるし、ヤマくんとか友達もいるだろうし」 「…………」 「瑛斗が大事にしてるものを奪いたくはないし、そしたらなんか、言えなかった。一緒にいたいって」 「…………」 「で、諦めようかなと思ったんだけど。できねーし。それならって、いいこと思いついたわけ」 「なにを?」 「俺が、瑛斗の生活に入ったらいい」 「……は?」 「俺が、瑛斗の傍にいる。別に俺、どこにいたって変わらないから」 「相良……」 「ん?」 「それは、ダメだ」 「なんで?」 「俺のために、相良の生活を犠牲にしちゃダメだって」 「別に犠牲になんてなってない」 「なる」  瑛斗は相良の言葉を遮って、続けた。 「それに……。あの時のことは、ただの……気の迷いかもしれないし」 「…………」 「たった1日一緒にいただけのやつのために、そんなことしたらダメだ」 「本当にそう思ってんの?」 「…………」 「瑛斗は、あれが気の迷いだったと思ってるわけ?」 「俺は……」  瑛斗はなんと答えていいかわからず、口を閉じた。  もちろん、気の迷いなんて本当に思っているわけじゃない。瑛斗にとっては、一晩だったとしても、好きな相手との大切な時間だった。だけど、自分のために相良に間違った選択をしてほしくなかった。後悔してほしくなかった。  黙ってしまった瑛斗の様子を見ていた相良が、なにやらスーツの内ポケットから手紙らしきものを取り出した。 「これ、見て」 「……なに?」 「いいから、見て」  差し出された封筒を受け取る。 「これ……」  宛名は相良宛となっており、裏を見ると差出人は意外なことに山本だった。中を開いてみると、写真が1枚と手紙が入っていた。 「あ……」  その写真には、瑛斗が写っていた。飛行機の座席で、泣きはらした顔を俯き加減にして、微笑んでいた。  いつの間に撮ったんだろう。  山本がこの時、カメラを手にして、しかも自分の写真を撮っていたなんて気づかなかった。しかもこんな、瑛斗が相良を想って、相良の笑顔を思い出して、思わず笑った瞬間を撮られていたなんて。

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