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エピローグ ④
「手紙も読んで」
そう言われて、手紙を開く。そこには、山本の丁寧な字で、勝手に住所を調べて、急に手紙を送りつけたことを詫び、この写真が旅の中で一番好きな写真で、相良にどうしても見せたかった旨が書かれていた。
『瑛ちゃんの本当の気持ちを知ることは僕にはできません。でも、レンズを通すと、写っている人や物が、言葉で話すよりも雄弁に語ってくれる時があります。僕はこの時、瑛ちゃんを見て思わずシャッターを押してしまいました。この瞬間を撮りたいという衝動に駆られたのです。それは、多分、この瞬間に瑛ちゃんが、大事な人を想い、本当に想い、心から笑った姿が、僕の心に響いたからだと思います。僕は、この写真を見る度に、本当に実感するんです。瑛ちゃんは、相良さんのことを本当に好きなんだなって。だから、相良さん。もし、相良さんにも同じぐらい瑛ちゃんを想う気持ちがあるのなら、瑛ちゃんを幸せにしてあげて下さい。』
「ヤマ……」
「いい友達だな、ヤマくん」
「ん……」
「その写真を見て、その手紙を読んで決めた。なにがなんでも瑛斗を大事にするって」
「相良……」
「もう、わかってたことだから。瑛斗に会った時にすぐわかった。瑛斗が、俺の守りたいものなんだって」
しばらく見つめ合った。突然の相良の告白にどうしていいのかわからない。自分は、本当に、この男の手を取っていいのだろうか。あまりにも住んでいる世界が違うのに。
その迷いが伝わったかのように、相良が言った。
「瑛斗。最初から俺と瑛斗の世界は1つしかない。立場とか環境が違うとか関係ない」
「…………」
「俺の傍で、力貸してくれるか? もっとふたりの世界を大きくするために。その代わり、絶対瑛斗を守り切るから」
「……俺でいいの?」
「なに言ってんの? 瑛斗がいいんだって」
当たり前だろ、と呆れた顔をして相良が瑛斗を見た。
相良がそう言ってくれるのなら。迷うことなんて必要ない。自分が相良にどうしてほしいかじゃなくて。相良がこの選択を自分で決めたのなら。守りたいものだと思ってくるのなら。
自分は、その手を取るだけだ。そして、どこまでも付いていく。
「相良……」
「ん?」
「ありがとう」
「……なにに?」
「会いに来てくれて、ありがとう」
「……ん」
「決心してくれて、ありがとう」
「……うん」
ふたりで顔を見合わせて笑った。
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