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第二章「バレンタインディナー」 プロローグ

 ピアノを弾くときに自分はいらない。  譜面に書いてあることを再現する。歴史、心情、作曲者の性格。  静まり返った空間で鍵盤の音がポーンと鳴る。  その音を追い続けていれば、曲は終わっていて、観客は拍手を打ち鳴らす。  ライトの熱さ、高揚感。  自分にしか弾けないとは思わない。  自分の名前が冠にはいったソロコンサートは、自分の音楽なのか。  それとも降霊者のようなものなのか。  春馬はピアノを弾き続ける。

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