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最終章「ガーデンパーティー」 プロローグ

 誰でもいいってわけじゃない。冬雪はお客様を選別する。  カクテルは作品なのに、平気で手垢を残していく。身勝手にべたべたと。それが、許せない。  お客様だからと言って購入者が好き勝手に扱うことが我慢ならない。自分のものをどう扱おうが勝手だろうというのが理解できない。  バーテンダーとお客様の、1対1のやりとりなはずだ。そこにどうして、他人が介入するんだろう。 「マスター、次はすこし強めのお酒を。飲みやすくしてよ」「お連れ様、ずいぶんとお気分が優れないようですが」「あとちょっとなんだよ」  カクテルは、女の子をナンパするための道具じゃない。 「ねぇ、わたしこれ飲んでみたい」「度数の高いお酒なので飲み慣れてない方にはあまりおススメしませんが」「作ってあげてよ。金なら払うからさ」「ん~、やっぱりわたしには無理かも」  この1杯を作れるようになるために、振ったシェイカーの回数をこの人たちは知らない。  飲まれなかったカクテルを、流しに捨てる度に心が死んでいく気がする。  嫌な記憶が蓄積されて、嫌悪に変わる。  冬雪は、酔っ払いが嫌いだ。

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