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第4話
「……ッ!!」
夜の冷気を一気に吸い込んだような。
滑らかな石の床の冷たさが、睿の体から体温を奪う。
どれくらい、意識を失っていたのだろうか?
目を開けた途端、睿の体中に激痛が走り。
肺が締め付けられるような苦しさが、立ち上がる気力すらおこらない。
逃げたい……のに……逃げることもできないのだ。
そういえば……俊杰は、何か言ってなかっただろうか?
縛られ抱き壊されるという恐怖に。
薄れゆく意識下で睿が聞いた言葉ーー。
〝无花果〟と。
〝无花果〟と、言ったのか?! 俊杰は!!
心臓がドクンと音を立てて、反動で睿は軋む体を持ち上げた。
手首や腕は紫色に縄の形状を残し、睿の体はアザだらけで足に力が入らない。
でも、とにかく! 今はここから逃げなくては!
何故、僕に固執するのか?
何故、爸爸を殺してでも僕を欲さんとしていたのか?
全ては、僕にまつわる……あの赤い杜鹃花。
全てを、この世の全てを手に入れられる〝无花果〟の力を手に入れたいに違いない。
でも、どうして?
どうして俊杰は、无花果を知っているのだろうか?!
腕に力を込め、必死に動かしながら。
這うようにして、睿はかんぬき鍵のある扉に向かった。
睿には、逃げるしか術がないのだ。
未だよく分からぬ〝无花果〟の証。
白牙天に抱かれている時は、如実に体も反応し。
体温が上がる度に、濃くなる体の赤い杜鹃花が。
この上なく快感に満たされ、白牙天に吸い込まれるような気持ちよさが湧き上がっていたのに。
俊杰とは、雲泥の差だ。
快感とは程遠い、気持ちよさとはかけ離れた。
自らの体を睿の中に強引に入れ、裂けてしまうくらい一晩中犯された睿には。
俊杰の行為に、吐き気をもたらすほどの苦痛でしかなかったのだ。
懸命に体を引きずり、ようやくかんぬき鍵に手がかり。
睿は必死に体を起こすと、壁に寄りかかるようにして満身創痍の体を支える。
いつ膝をついてもおかしくない、己の体を奮い立たせ。
かんぬきを一気に動かした。
カラン、カランーー。
かんぬきが石の床の上に落ちて、睿の肝は氷の冷えあがる。
「っはぁ……はぁ……はぁ……」
ゆっくり、ゆっくりと。扉をあけて。その隙間に体を滑り込ませた。
「よぉ、睿。また、逃げるのか?」
「!?」
俊杰の声が聞こえた瞬間。
ガタンーー!!
扉越しに衝撃を受けた睿の限界の体は、再び冷たい石の床に投げ出された。
「あっ!!」
「ったく、油断も隙もないな……」
そう言って部屋に入ってきた俊杰は、かんぬきをかけると。
睿の腹を、グッと力を込めて踏みつける。
「っゔぁぁ!!」
「……もう、帰るところもなかろう。いい加減俺のいうことを聞け、睿」
抵抗することなど、一気に頭の中から消え去った。
震えてる手で俊杰の足を掴み、その視線を逸らす。
ガタガタと震える睿の足を、太腿から掴んで肩にかけると。
赤く傷付いた睿の秘部に、俊杰がその固く熱いものを強く押し入れた。
「あ〝っ……あぁ……やめて」
「あぁ、すぐやめてやるよ。无花果の証さえ、俺に見せればな」
「!?」
やっぱり、无花果と言った!!
何故……? 何故、俊杰は无花果のことを知っているんだ!!
たまらず、睿は。
身を捩って、本能的に俊杰なら逃れようとしてた。
「おっと、暴れるなよ。睿」
「いやぁぁ! いやぁ……!! あぁぁっ!! んぐっ!!」
その時、俊杰とは別な手が睿の口を塞いで。
顎を支えられた睿は、口移しで何かを飲まされた。
途端に身体が、火鉢のように燃え上がる!
あ……あの時の、薬……?
霞が頭を覆って朦朧とし出した意識の中。
睿の口を塞ぐ男の声が、じんわりと睿の耳に突き刺さった。
「白牙天の匂いを纏っているとはな」
「?!」
そのまま、また。
顔も見えない男は、睿の口を塞ぎ舌を絡ませる。
「んうぅ……」
体の全てが過敏になったのか、胸の小さな膨らみを弄ばれ。
前を擦られる内に、俊杰に犯されている睿の下半身の腰が勝手に浮き上がった。
「時間はかかるだろうが。白牙天の匂い、綺麗さっぱり忘れさせてやるよ。无花果」
目の前で笑う俊杰と。
顔も見えない男の声に。
睿は、バラバラになる自分の身も心を、必死に繋ぎ止めようと。
下唇を、ギュッと噛み締めた。
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