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第7話

 保護した鳥に首謀者を尋ねたが結局解らなかった。気付いたら襲っていたらしい。  もしかしたら町を襲う獣達も操られているのかも知れない。  件の鳥は裏柳に良く懐いてしまったので、そのまま飼う事にし、城の庭に離してやる。  城は外とは別のバリアで守っているので普段は他の獣は入ってこれない安全地帯であだ。  緊急事態である為に会議を開く事にし、裏柳を部屋に残して漆黒は出ていく。  部屋の外は護衛である虎に任せた。  元々危険な為、自分が最も信頼出来る側近以外を裏柳に近寄らせるつもりは無く、裏柳の部屋も虎と羊とワニ、そしてフラミンゴと鹿しか教えて居なかった。  部屋に残された裏柳は不安で有ったが、どうする事もなく、一人本を読み過ごす。  窓の外には楽しそうに飛び回る鳥が見える。それだけが救いであった。  会議は真夜中まで及んだ。  まさか自分の力が弱まっているうちに謀反を起こされかけていたとは。  漆黒は、ただ単に自分の守りが甘くなっていて魔物や獣が狂暴になっているのだと思っていた。  漆黒の一族に知能を持たない動物と同じ獣と会話出来る者は居らず、漆黒も勿論会話出来ない。ペットの烏は懐いてくれているが、本当にペットである為に言っている事は解ってはいないのだ。  雰囲気で感じ取るだけである。  恐らく知能を持たない獣を操る力を有した者がおり、その者が謀反を企てているのだろう。  もしかしたら今に始まった事では無いのかもしれない。  此方の統治力が弱まり顕著になっていたが、先々代からの因縁か……  詳しくは解らないが、裏柳のお蔭で此方の統治力が回復するのを恐れ、襲ったのだろう。  裏柳に獣の洗脳を解く力が有ったとは、向こうも予想外であった事だ。  何か打開策を考え、また裏柳を襲撃するかもしれない。  どちらにしても妃を娶ると言うことは、また力を回復し続ける事が出来る。  このままでは襲撃の期を逸してしまう事は向こうも知っているだろう。是が非でも裏柳を消し去りたいはず。  暫く城の安全を強化し、更に裏柳の部屋の守りも強化しよう。  いや、そうすると他の国への安全が疎かになってしまう。  それは俺の仕事としては本末転倒。  漆黒は頭を抱える。  事は急を要している。  まだ本調子まで回復していない今の弱った所を敵も叩きたいであろうし、総攻撃を仕掛けられ兼ねない。いくら裏柳が獣お言葉を交わせる力を持っていたとしても数には勝てないだろう。  自分も小水では回復が間に合わないかもしれない。  クソ。  裏柳にその気が起きなければ別に行為を強要するつりは無かったのである。  愛する可愛い裏柳を怖がらせたくは無い。  こうなったら仕方ない。  裏柳を国へ返し、別のΩを拐かすしか無いか。  元々はそうしていた様だ。  先代も力が弱まる前にそのつどΩを拐かして力を回復させていた様である。  白の国のΩに恋をし、ちゃんと求婚して連れ去って来た王は歴代でも漆黒だけである。  家臣からは変わり者扱いだ。  だが好きになってしまったものは仕方ない。  それにしても、裏柳を連れてきた俺が思うのもおかしいのだが、やはり白の国から勝手に見知らぬΩを拐かすと言うのはどうなのだろうか。  気が乗らない。  裏柳以外にそういう気分もおきないし、嫌だ。  拐かすΩも可哀想である。まぁ、裏柳も殆ど拐かして来たようなもんだけども……  取り敢えず城と国の安全強化に全部を振り、裏柳の部屋は自分が直接守る事にした。  議論が白熱し、深夜を回ってしまっていた。  寝ているであろう裏柳を起こさない様に部屋に入る。  ベッドを確かめれば、裏柳がスヤスヤと眠っており、安心した。  隣に腰を下ろし、髪を撫でる。  部屋に取り付けたお風呂を使ってくれたらしい。シャンプーの良い匂いがしている。  眼鏡を外し、眠る裏柳は普段より幼く見え、可愛らしかった。  出会った頃もまだ眼鏡をしていなかったな。そんな事を思い出し、目を細める。 「お面、まだ取ってくれないのか?」  うっすらと目を開いた裏柳にそう言われた。 「すまん。起こしてしまったか?」 「初夜なのにちゃんと待てなかった。謝るのは此方だろう。お疲れ様」  裏柳は体を起こして眼鏡をかける。 「ちゃんと綺麗にして待っていた」  体は緊張しているし、顔は乞わばっている。  怖いのに無理して。 「お前の気持ちが無いのに無理強いしても仕方ない。今日は一緒に寝よう」 「そう言う訳には行かない。俺だって白の王国のΩだ。白の王国のΩが娶られた国の王と初夜もまともに迎えられないのでは話しにならない。これは俺の勤めだ」  裏柳は頑固である。  そう、こういう頑固な所も好きなんだが、今は困るな。 「良いから寝よう。俺も今日は疲れて相手に出来ない」  ムキになる裏柳から眼鏡を取り、ベッドサイドに置く。裏柳を抱きしめてベッドに入った。  俺は裏柳を大事にしたいのだ。無理矢理なんて絶対にしたくないのである。俺だって虚しくなる。 「お前はお面取らないのか?」 「そんなに気になるのか」  確かにお面を着けたまま寝るのは嫌だし別に構わない。寝る時は外すものである。  漆黒は般若のお面を外してベッドサイドに置いた。 「わぁ」  まじまじと観察する様に見つめてくる裏柳。 「あまり見るな恥ずかしい」 「凄い綺麗な顔なんだな。睫毛長い」 「そんな事を言うのはお前だけだ」 「えっ? そんな事は無いと思うが」  漆黒の素顔は黒髪と赤い瞳はそのままだが、男前の美形である。  般若では無くても素顔は綺麗すぎて怖かった。  あまりの綺麗さにこの世の物は思えない程である。  百人居たら百人が振り向き美形だと思うだろ美形だと言うのに、何故か本人は自信が無さそうだ。  周りが獣だらけで基準がおかしいのだろうか。  それにしても……  何処と無く懐かしい面影を感じる気がする。 「俺としてはお前の方が綺麗だと思うけどな」  そう言うとフッと微笑む漆黒。 「やはり獣だらけのせいで基準がいかれてしまったんだな」  可哀想に。  それにしても美形の笑顔は破滅的に綺麗で裏柳は視線を外してしまった。 「兎に角、もう寝よう。本当に疲れたんだ」   ハァと溜め息を吐く漆黒。  セックスすると回復するんじゃ無かったのだろうか。  そんな事を考えている内に寝息が聞こえてくる。  もう寝てしまったらしい。本当に疲れていたのだな。  明日も沢山小水を出してあげられたら良いが……  裏柳もそんな事を考えながら眠りにつく。  頼もしい漆黒の胸は安心出来き、裏柳も良く眠る事が出来るのであった。

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