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第18話 ※えっち

 チリンチリンと揺れる簪。  懐かしい鈴が揺れる。  風呂上がりの漆黒は今日も髪留めに鈴の簪を使っていた。  唇を離し、息継ぎしては再び口づける。キスをした事も無かった裏柳は直ぐに息を上げ、苦しげに喘いだ。 「ん、ハァ……苦し」 「すまん、大丈夫か?」  がっつき過ぎだとは思うが、漆黒はもう止められないし、止まれない。  苦しげな裏柳を心配しつつも口づけを止められなかった。 「ふぁ、あっ……」  酸欠でクッタリしている裏柳の頬を撫でる。  漆黒は裏柳が可愛くて可愛くて仕方無かった。 「錫……」  漆黒の髪で揺れる鈴を見て、裏柳は思わず錫を呼んでしまう。 「俺は漆黒だ」  漆黒はチクリと胸の痛みを覚えた。  裏柳は錫が確かに好きだったかもしれない。自分が錫ならば白の国で裏柳と幸せになれたのかも知れない。でも裏柳は錫を女の子だと思っていた。大きくなって錫が男だと解っても、はたして結婚してくれたかどうか……  十二歳の子供が言う結婚の約束等、戯言に過ぎないものをいつまでも引きずっている俺は子供なのだろう。  図体だけ大きくなってしまった。  どちらにしろ、俺はもう可愛らしく可憐な錫では無いのである。  そう思うと辛く悲しい。 「漆黒……」  悲しげな表情が顔に出てしまったのだろう、優しい裏柳は心配し、漆黒に手を伸ばし頬を撫でる。 「漆黒」  そう名前を呼び、抱きしめるのだった。 「裏柳、愛している」  漆黒も裏柳を強くて抱きしめた。  こんな男に見初められた裏柳の方はたまったものでは無いだろう。そう自嘲的に笑ってしまう漆黒だった。  どうせ一緒になれないものを自分の為に連れ去らって来たのだ。連れて来たら連れて来たで余計辛くなるのに。  俺はなんて馬鹿なのだろうか。   「ううっ…あっ…っ」  裏柳の後孔を確かめる様に指で触れる漆黒。裏柳は少し怖かったのか体を震わせた。 「ちゃんと濡れているな」  漆黒は褒める様に裏柳の頭を撫でる。  それでも通常のΩより濡れてはいなかった。裏柳を傷つけのは本位ではない。むちゃくちゃにしてしてしまいたい本能を何とか押さえつける理性はまだ微かに残っていた様だ。  漆黒は小瓶を取り出し中の液体を垂らす。自分の指を湿らせ、裏柳の慎ましやかな後孔にもたっぷりとかけた。 「ひあっ! にゅるにゅるする」  急に液体をかけられて驚いたのだろう、裏柳は少し不安げな表情をした。 「痛くない様に濡らしているんだ。気持ち悪いかも知れないが、少し我慢してくれ」  そう優しく教える漆黒。 「ごめんなさい、出来損ないのΩでごめんなさい」  裏柳はシュンとした顔で謝る。 「裏柳は出来損ないのΩではないよ。ほらその証拠にαである俺を興奮させている。なんて可愛い小悪魔なんだ」 「興奮する? 漆黒は俺を孕ませたい?」 「孕ませたいよ。裏柳は立派なΩだ」 「エヘヘッ」  よしよしと頭を撫でる漆黒に裏柳は可愛いく笑ってみせる。  漆黒は裏柳の後孔をよく濡ら、小指を差し込んだ。 「ふあっ……」  シーツを掴み耐える様な表情をする裏柳。まだ小指だと言うのに大丈夫だろうか。裏柳の後孔はまさに蕾である。小さくて可愛らしい。  いったん小指を抜き、様子を伺いつつ、今度は中指を挿し込む。 「ヒエッ!?」  前立腺に触れた様だ。 「あうっ……あっ!?」  上手く快感を拾えているらしい。 「上手だな裏柳。ちゃんと気持ちよくなれている。偉いぞ」 「ふあっ! 俺っ…偉いっ?」 「いい子だ」 「あっアッ、漆黒…漆黒」  指を二本に増やしても大丈夫そうだ。  暫く指で慣らし、三本目も上手く飲み込めるようになった。  クチャクチャとバラバラに動かせば、裏柳は気持ち良すぎるのか、イヤイヤと首を振り、涙を流す。  可愛くて堪らない。 「うあっすごい、ダメ、指、ダメ」  ダメダメと逃げようと腰をくねらせる裏柳。漆黒はそれを逃がさず口づける。 「あふっアッやっ…あうっ、んん」  裏柳の蕾は開花するようにすかっかり緩み、濡れていた。  もう漆黒も限界である。  挿れたい。俺のΩを孕ませたい。  それしか考えられなくなってくる。 「裏柳、挿れるぞ? 良いか?」  許可を取りつつも、これで拒絶されても止められないだろう。  幸い裏柳はコクリと頷いてくれた。 「早く来て……」  そう耳元で甘く囁くのだから。  裏柳は本当に魔性のΩである。    初めてである裏柳が少しでも楽な様にとバックから責める漆黒。漆黒の陰茎はαとしての普通の形状であるが、やはり通常よりは大きいだろう。  流石に飲み込む裏柳も苦しそうである。 「ううっ…クッ、あぐ……」  シーツを掴み、何とか堪えている様子がいじらしい。  可哀相だが止めてあげようと言う気にはなれず、もっと泣かせたい。むちゃくちゃに突き上げたい衝動にかられる。  だがそこをグッと堪え、裏柳の背中に痕を散らした。 「漆黒…俺も……」  そう言ってチラリと漆黒を見つめる裏柳は何か物欲しそうな表情であった。 「何だ?」  俺もと言われても、何か解らない。 「俺も、んっ、漆黒に痕、つけたい。ふっ」 「今はこれで我慢してくれ」  チュッとキスして、微笑む漆黒。  やっと半分程である。  これ以上は無理か。全部挿られなくても充分気持ちいい。全部挿れたい、むちゃくちゃに突き上げたいと本能がせがむ。何とか理性で耐えた。 「気持いいよ裏柳」 「俺も…俺もキモチイイ」 「裏柳は立派はΩだな。良い子だ」  漆黒は裏柳の肩口にキスをした。  今すぐにも噛みつきたい。番にしてしまいたい衝動が襲う。  駄目だ。番には出来ない。  裏柳を不幸にしてしまう。  すまない。裏柳。    漆黒は涙で視界がにんじでいた。  後ろだけではイケないだろうと、裏柳の可愛い陰茎を優しく撫で、上下にしごく。 「あアッっ、んっ、ヤッ…駄目、漆黒、駄目ぇ」 「何が駄目なんだ?」  気持ちよさそうなのだが、泣いて嫌がる裏柳。耐えずに達してくれたら良いのだが、何が気に食わないのか。漆黒の腕を引っ掻く。 「俺だけ気持ちよくなってる。漆黒にも気持ちよくなって欲しい」  うう〜と、裏柳は辛そうに泣いてしまう。  こんな状態なのに、俺の心配までしてくれるなんて、なんて可愛いんだ裏柳。 「十分気持いいよ」 「全部挿れてない!」 「えっ」  気付かれているとは思わなかった。  後ろは見えないだろうに何故解ったのだろう。 「全部挿れたいが、流石に無理だ」 「無理じゃない! 俺が出来損ないだからそんな事を言うのか? 俺がちゃんとしたΩじゃないから」  裏柳はしくしくと泣き出してしまった。  そんなつもりではない。裏柳を出来損ないだなんて思っていない。 「裏柳は充分立派なΩだよ。アナルだってしっかり濡らしているし、上手にαである俺を誘っている。立派なΩだ」  そう慰める様に背中を撫でる。 「番にもしてくれない癖! だったら最期まで挿れてくれよ!!」  裏柳の気は紛れなかったらしく、声を荒げると、うわ~んと、声を上げて泣いてしまった。もう裏柳の顔はぐちゃぐちゃである。  発情期で情緒が不安定なのだろう。Ωには良くある事だ。  よしよしと優しく慰め、これで終わりにしてやるのが大人の余裕あるαである。他のΩ相手ならばそうできる自信があるし、そもそもΩの発情に欲情する事など無い漆黒であるが、裏柳相手に大人な対応が取れる訳がない。  理性ももう限界であった。  俺がこんなに耐えてやっていると言うのにこのΩは更に俺を煽るのかと、乱暴な気持ちが勝ってしまった。    漆黒は裏柳を強く押さえつけると、グッと一気に奥まで突き上げる。 「ひっウグッッッ!!」  突然の事で声にならない悲鳴を上げる裏柳、目の前がチカチカし、一瞬気を失ってしまう程であったが、漆黒に頬を叩かれ起こされる。 「ほら、お前の望み通り奥まで突いてやったのに早々に寝るんじゃねぇよ」  裏柳の腰を掴み、乱暴に揺さぶる漆黒。 「ひやっ、急にダメ…漆黒、ごめんなさい、ゆっくり!」 「お前が煽ったんだぞ」 「ごめんなさい! ダメっ、うあっアアン!」 「ほら、イく時はイくって言わなきゃ駄目だろ?」  「イクイク、あっあっ、イっちゃう」 「すごいなイキっぱなしじゃねぇか」  裏柳はエムっ気があるのだろうか、後ろが気持ちよくて仕方ないらしい。裏柳がイク度に絞まるアナルに漆黒も余裕では居られない。  もう出そうだ。  本当に最期の最期に残った理性で抜かなければと思い、反射的に腰を引く漆黒。 「イヤダァ抜かないでえぇぇ!」  そう叫んだ裏柳に、抜く事は出来ず、そのまま裏柳の中で達してしまう。  αの射精は長く、始まってしまうと抜け無い。  裏柳は既に気を失い倒れてしまっているが、抜いてやれないし、漆黒の頭も冷静になる。  ヤバい。  思いっきりヤッてしまった。  現在進行で裏柳に酷い事をしてしまっている。   最低だ。  これは和姦と言えるのだろうか、いや、発情期のΩの言葉等、殆ど本人の意思ではない。こんなのは強姦に決まっている。  何より大事で大切な裏柳を他でもない俺が傷つけてしまう。  やはり駄目だったのだ。  俺は馬鹿だった。裏柳をここに連れて来るべきでは無かった。    解っていたじゃないか。  裏柳を幸せにしてやる事も俺が幸せになる事も無いのだ。    裏柳を側に置いても危険な目にあわせ、傷つけ不幸にしてしまうだけ。  俺だって裏柳が側に居れば居るほど手に入ら無い人に焦がれ、辛くなるだけなのだ。  あの時、裏柳を連れ去ったりしなければ良かった。   そうすれば裏柳は白の王国の王の妃になれた。  裏柳の幸せをただ奪ってしまっただけだ。  俺は最低だ。   頭から足元までまるで氷水につけられているかの様に冷えているのに、ある一点だけ酷く熱くて気持いいのが悔しい、自分の陰茎が酷く恨めしかった。もういっそ切り取ってしまいたいくらいには恨んでいる。  眠る裏柳を抱きしめ、ただ「ごめん」と謝るしか今の漆黒には出来ないのであった。   

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