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第23話

 大広間に戻った漆黒は、鳥族の長を別の部屋に隔離し、他の長への対応を済ませると宴はお開きにした。  冷静な面持ちで対応したが内心は落ち着かない。  あの場ではああ言うしか無かったのだ。  だが、裏柳に酷い事を言ってしまった。傷付けてしまっただろう。  早く部屋に戻って弁解したかった。  鳥族の長にも悪い事をしたと思う。本人に悪気が無いのも裏柳の対応にそうするしか無かったのも知っている。  国内は今、和やかな雰囲気であるのでそれにのまれて曖昧になってしまったのだろう。  誰も悪くない事故であるのだ。  だがこの国では王の妃は王の所有物である事になっているし、体の何処かに接吻するのは性行為の同意とみなされる。  あんな場所で自分から手を差し出しキスさせるなど、見てる方からしたら王の目の前で堂々と浮気宣言である。  己が裏柳に説明しておかなかったのが悪かったのだが、心臓が飛び出るかと思った。  鳥族の長も裏柳にその意志が無く、敬意の表現だと解っていた様であるが、戸惑った事であろう。浮気の誘いであったとしても妃から手を差し出された断る訳にはいかないのである。  本当に誰も悪くない大事故を起こしてしまった。  その上、その後も最悪である。  裏柳も悪いと思う、王である俺が妃の命令で頭を下げる等出来る訳がない。  今は統治出来ているので魔族達も大人しく従ってくれているが、スキを見せて舐められたらお終いである。  あそこではああ言うしかなかったのだ。  解って欲しい。  魔族長達には妃が白の王国出身な為にその作法でしてしまった行為であると説明し、魔族長達も解ってくれた。鳥族の長も隔離したが直ぐに帰してやった。  酷く申し訳なさそうにしていたので可哀相である。  取り敢えず、妃が気に入っているようだから今度こっそり遊びに来いとは伝えておいた。  事を済ませた漆黒は急いで自室に戻る。  裏柳の機嫌を取らなければ。  誤解をしているだろうから早く解きたい。  そういう国のきまりであって、漆黒は裏柳の全てを俺の物であり、お前の体はお前の物では無い等と考えた事すらない。  裏柳の体も心も裏柳の物である。寧ろ俺の方が体も心も裏柳に捧げている。  だけど俺は一応、この国を治める王なのである。魔族達に舐められると大変なのである。  どうか解って欲しい。  酷い事を言ってしまって申し訳ないが、言うしか無かったのである。  俺も苦しかった。 「裏柳!!!」  自室に戻ってきた漆黒はベッドを確かめる。大人しくベッドで泣きながら待ってる玉ではないか。  そこに姿は無かった。 「裏柳!!」  名前を呼びながら部屋の中を探す。出口には施錠がされているので部屋を出たとは思えない。  部屋の外には虎も待機させていた。 「裏柳!! 何処にいる!」  不貞腐れて隠れているのかと部屋の隅々まで探したが、何処にも居ない。  何故だ。  何処に居るんだ。 「裏柳、俺が悪かった。これには理由があるんだ。話し合おう!」 「裏柳!! 隠れてないで出ておいで〜」 「愛してるよ裏柳〜〜」 「ねぇ、お願いだから出てきてよ〜 俺が悪かったよ〜 ねぇってば〜〜」  いくら呼びかけても出てきてくれず、何処を探しても居ない裏柳に漆黒はもう涙目である。  ふと、窓の近くに紙が落ちている事に気付いた。  手に取る。 『もう漆黒の事が解りません。国に帰らせてもらいます。さよなら』  そう書かれていた。  え?  どう言う事??  直ぐには理解が追い付かない。  まさか、バルコニーから!?  漆黒は直ぐに窓を開けて確かめる。  鳥の羽根が落ちていた。  あの仲良しの鳥か!! 「おい虎!! 裏柳が家出したぞ! 早く探せ!!!」  全く使えない虎である。  部屋の外にいた虎がビックリして飛び込んできた。

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