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第25話

 広場付近まで出てきたのは久しぶりである。  漆黒は足早に裏柳の場所へ向かった。  あてなく闇雲に探しても見つかる訳が無いと踏み、仕方なく先程帰したばかりの鳥族の長に伝令を走らせたのだ。  裏柳と居るのは間違いなく長のペットである鳥だ。    長は直ぐに鳥と連絡をつけてくれ、伝書鳩を飛ばしてくれた。  どうやら裏柳は広場付近の木の上で泣いているとの事である。  長は重ね重ねの無礼に気が利ではないらしく、殆ど字がブレブレであった。  心中を察するに余りある。後で何か礼をしなければと思いつつ、今はそれどころでは無かった。  裏柳が泣いていると言うのだ。早く側に行かなければ。  そう思い漆黒は瞬間移動で広場付近まで飛んだ。  そこまで行けば裏柳の匂いが嗅ぎ取れる。  匂いを頼りに裏柳が隠れてる木まで辿り着いた。  裏柳は鳥の翼に隠されながら泣いている様子である。   近くまで来たが、どう声をかけて良いか解らない。  どうしようかと悩んでいると、裏柳がポツリと零す『漆黒は本当に俺を愛してくれているのだろうか』と。  まさか疑われるなんて心外だ。驚きとショックで少し固まってしまった。 「愛しているに決まっているだろ!」  ハッとして裏柳の隠れてる木に登る漆黒。  鳥も此方に気づき、翼を退けてくれた。 「漆黒?」  漆黒を見る裏柳は沢山泣いたのだろう顔と目を真っ赤にさせていた。直ぐに恥ずかしくなったのか視線を反らす。 「ごめん裏柳。酷い事言った。だがあれは俺の本心ではなくて……」  裏柳の肩に触れる漆黒。 「怒られて当然です。私が間違っていました。どうか罰してください」  裏柳は漆黒の手をそっと跳ね除けた。 「罰し…… そんな事はしない。俺がちゃんと伝えなかったのが悪かった」 「私が自分で調べる事でした。怠慢でした。どうぞ私を叱って下さい」 「良い。もう終わった事だ。あの…… 怒ってるのか?」  全然こっちを見てくれない上に、あまりにも余所余所しい喋り方に漆黒は不安になる。 「怒って等いません。私が王に不満を述べる方が間違いでした。ですから罰してください」  裏柳は頑なである。 「やっぱり怒ってんじゃないか。何が不満なんだ」  やはり1から説明する必要が有りそうである。裏柳の解ってるは信用出来そうで出来ない。しっかりしているが、うっかりしている所もある裏柳である。  きっと何かまだ誤解している部分が有るのだと思った。 「ですから不満等ありません」 「ならばその言葉遣いをやめろ!」  あまりに冷たい物言いに、漆黒もイライラしてきてしまう。心を閉ざしてしまっている裏柳に怒ってしまえば逆効果だと思うが、酷く感情を逆なでる物言いをする裏柳も悪いと思うのだ。 「王に向かって敬語を使うのは当たり前ではありませんか。今までが間違っていたのです。間違いは正さなくては」 「妻が夫に気安く話すのは当然だろう」 「私は妃であって貴方は王です。普通の夫婦の様にするのはおかしいでしよう」 「何で今更そんな話しになるんだ」 「今までがおかしかったのです。間違いは正さなくはいけません」 「それはさっき聞いた」  話しが堂堂巡りになってしまう。  ここまで頑なになってしまった裏柳は初めてである。アイスで許してくれるかあやしい。  ちゃんと此方の話を聞いて貰えば解って貰えるとは思うのだが……  あまりにも冷たく感情の無い話し方が漆黒にはどうしても耐えられなかった。 「王にお手間をおかけしまして申し訳ありせんでした。城に帰りましょう」 「お、おお。帰って来てくれるのか」  一応、城には帰ってくれる様子に執行はホッとする。 「だって白の王国に帰れません。私を送り返したければ送り返してください」  「送り返したくなど無い。なぁ、いい加減に機嫌を直してくれ」 「機嫌は悪くありません。鳥、俺達を城まで送ってくれ」  取り付く島もない裏柳は鳥の背中にさっさと乗ってしまった。  「乗るんですか乗らないんですか」  呆然とする漆黒は、裏柳の言葉に取り敢えず鳥のお世話になることにする。  まぁ、城に戻ってくれると言うのだから良かった。  一晩寝たら落ち着くだろうと漆黒は思っていた。  きっと今日は疲れているのだ。  明日、中庭にでお茶でもしよう。バイオリンを奏でて歌を歌おう。  きっと仲直り出来る。  漆黒はそう考えて疑わなかった。  城の後ろでお祝いの花火が上がるのが見えた。

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