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第33話
広場では魔物や獣、動物達もが交流会を楽しみ、争い事もめっきり減り、城の兵士の仕事もめっきり減っていた。
バリアの境界を抜けようとする者の無く、本当に平和な日々が訪れている。
ここは本当に黒の王国なのだろうかと不思議に思う程であった。
漆黒の仕事も減り、ベッドで惰眠を貪れる程である。
毎日愛しの裏柳から小水を貰い、心も体も魔力までもが潤っていた。
裏柳が産んでくれた卵の効果も有り、漆黒はお肌までプルプルになった気がする。
大きなサンベッドで自分の胸元に顔を埋めて眠る愛しい人に優しくキスを落とした。
ああ平和で幸せな日々。
まるで夢の様であった。
これも全ては裏柳のお陰である。
ずっとこんな日々が続けば良いのだが……
でも、そろそろ決断を下さなければならない。
裏柳を孕ませ、白の王国に戻して永遠に会えない道か
白の王国から別のΩを攫って来て孕ませ、白の王国に送り返し、裏柳と死ぬまで此処で添い遂げるか
二つに一つだ。
「漆黒?」
裏柳がお昼寝から目覚めた様だ。名前を呼ばれて咄嗟に笑顔を作る。
「ごめん寝てしまったな」
「ベッドの中なんだ寝るのは普通だろう」
目を擦る裏柳に笑う漆黒。
庭園に設置されている温室内のサンベッドは心地が良い。
裏柳はお気に入りの本の内容を聞かせていた。
「それで、魔女に城に閉じ込められたお姫様はどうなったんだ?」
裏柳が寝てしまう前に話していた事を思い出す。
髪の長い綺麗なお姫様は悪い魔女にお城に閉じ込められてしまっている話しである。
自分も一応白の王国で暮らしていたので若干聞いた事の有る童話だとは思ったが、詳しくは覚えていなかった。
「勇敢な王子様が助け出して添い遂げるんだ」
「そうか、良かったな……」
何だか悪い魔女につかまって城に閉じ込められているお姫様が裏柳で、勇敢な王子様が白亜と言う感じがして少し面白く無い話しである。
「裏柳も王子様が助けに来たら連れていかれてるしまうのか?」
「?」
裏柳は漆黒の質問の意味が解らずキョトンとしてしまう。
「悪い」
思わず変な質問をしてして困らせてしまった。
「俺は漆黒を助けに来た王子様ポジションなんだけど……」
「何故だ?」
どうしてそのポジションなのだ。
裏柳はお姫様ポジションだろ!
「王子様じゃなくて妃だけど、黒の王国を守る為に閉じ込められている王子様を助けに来たポジションだろ?」
「う、うむ……」
確かに助けられている。
そうなるのだろうか。
「俺は漆黒を助けに来た王子様ポジションだから添い遂げるぞ!」
「そうか。有難う俺の王子様」
フフッと笑う裏柳にフフッと笑い返し、額にキスを落とした。
漆黒は安心する。
やはり裏柳を手放したくはない。
白の王国からΩを掻っ攫ってくる他無いだろう。
漆黒はそう密かにそう決定するのだった。
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