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第42話

 部屋で一人塞ぎ込んでいた漆黒であるが、胸騒ぎに体を起こした。  なんだか解らないが激しい胸騒ぎを覚えた。  白の王国付近まで様子を見に行こう。  我ながら諦めの悪い事である。  だが裏柳が心配なのだ。  裏柳に何か有った。そんな気がしてならない。  瞬間移動……  しまった魔法阻害されている!  白の王国に再び侵入した事で、漆黒は体力を擦り減らしてしまっていた。  肉体的な事よりも、精神的な物が大きい様であるが。  優秀で心配症の側近が3匹も居るのだから困りものだと漆黒は思う。  そして解けないと言うことは力が足りていないと言う事である。  裏柳が側に居ないと俺は駄目なんだ。  仕方ない。  ここは我慢してあのΩを抱いき力を蓄えるしかないか。  取り敢えず小水だけでも貰おう。  漆黒は仕方なく側近を呼び、Ωを監禁した部屋まで連れて行って貰うのであった。 「イヤァァ来ないでぇーー 殺さないでーー」  漆黒が部屋に入るとΩは悲鳴を上げて泣き喚く。  ヤル気が出るどころか可哀想になってきた。  お面を取れば少しは落ち着くかも知れないが、婚姻もしてない相手に顔を見せるのはご法度だ。 「落ち着いてくれ、手荒な真似はしない。出来れば貴様の小水を飲ませろ」 「小水ってなによーー!」 「貴様のおしっこだ」 「キャァーーー変態!! イヤァァーー!!」 「落ち着け、魔法使いならば基本飲むものなんだ」 「キャァーー近づかないでぇーー 殺さないでぇーー」 「話の解らんやつだな」  ただ小水が欲しいだけなのだが、これでは話にならない。 「解ったから落ち着け、取り敢えずもう寝ろ!」  どうしようも無いので寝るように言い、部屋を出た。  余計な物を連れ帰って来てしまった感が凄い。  落ち着いたら白の王国に返した方が良いかも知れない。  だが誰を連れてきても同じ様な反応をするだろうしな…… 「王、王の精子を取りまして、あのΩの中には直接注射する方法など……」 「そんな可哀想な真似出来るか。暫くそっとしておこう」  羊の提案に漆黒は嫌悪感を感じた。 「外を散歩してくる」  漆黒がそう言うと、虎が後に着いて来た。  森には深い霧が立ち込めていた。  黒の王国らしい様子であるが、最近は月の見える日も多く、何だか珍しい様な気さえする。  天気も悪く、今にも雨が降り出しそうであった。  胸騒ぎが収まらない。 「漆黒様、城に戻りましょう。雨が降りそうです」 「ああ…… もうちょっと」  虎の声を退け、歩みを進める漆黒。  何だろう。 「何だか甘い匂いがすると思わないか?」  微かに何かが匂ってくる。この鈴蘭の香りは…… 「これは裏柳様の……」  虎も感じ取った様だ。  胸騒ぎの正体はこれか。  裏柳は今、白亜と愛し合っているのだろう。  結婚式を終えたら初夜になる。  子作りに励んでいるのだ。  裏柳の赤ちゃんはきっと可愛いだろう…… 「漆黒様……」  漆黒の様子に気づき、虎が声をかける。  漆黒は泣いていた。 「迎えに行ってください! 今からでも間に合います。愛し合っているのでしよう?」  「裏柳は俺を忘れてしまったんだぞ」 「忘れたからと言ってなんですか! 愛し合っていたのならまた愛し合える筈でしょ!!」 「子供が出来たら離れ離れになる。耐えられない」 「それは…… 皆で考えましょう!」 「無理だ。辛いんだ……」 「もう!!!!」  虎はウジウジする漆黒に我慢出来ず、漆黒の襟を口に咥えると子猫を運ぶ格好で走り出した。   お咎めならばいくらでも受けよう。  今は漆黒を裏柳の場所まで連れて行くのが先である。

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