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第47話
漆黒は裏柳を外に連れ出す。
今日は天気が良い。黒の王国も裏柳が帰ってきてくれて嬉しいように思えた。
中庭でお茶をしつつ、今までの経緯を説明する事にした。
自分が白の王国に住んでいた事、その頃は見た目も違い、女の子だと思われていたが、裏柳に助けられて仲良くなり、結婚の約束をした事。
自分が黒の王国の王として生活し、心が荒む時も裏柳を思い出して頑張れた事。
裏柳の事を忘れられず、白の王国から連れ去って妃にしてしまった事。
黒の王国の王はバリアを張り、魔物や獣、獰猛な動物が外に出ない様にしている事。その為に莫大な魔力を必要とし、常に保たなければならない事、そのせいで寿命が短い事、世継ぎが必要な事。
バリアの内と外では記憶を持ち越せない事。
黒の王国の王と白の王国のΩの間に子供が出来たらΩを白の王国に帰さなければいけない事。
裏柳を手放したくなくて、他のΩを連れ去ってこようとし、失敗した挙げ句、裏柳が此方側の記憶を失ってしまった事。
全てを説明しした。
「漆黒様は私が嫌いで白の国に追い返した訳では無いのですね?」
漆黒の話を聞き終わった裏柳の第一声だ。
「勿論だ。俺がお前を嫌いになる事なんて未来永劫ありえない」
「私も、漆黒様が好きです」
裏柳はホッとした顔をし、漆黒の手を握る。
嫌われて捨てられた訳では無くて良かった。
「だが、俺はどうしたら良いのだ。裏柳を手放したくない。だが他のΩを孕ませる気も無いんだ」
「私が産みます」
産めるかどうか解らないが、産めるなら産みたいと思う裏柳。
「嫌だ! お前を二度と手放したくない。俺を忘れてしまうなんて耐えられない」
「私だって漆黒様を忘れたくありません。ですが、漆黒様の子供を孕みたいです」
「うっ、うう……」
意思の強い裏柳の瞳に、漆黒はどうしたら良いか解らなくなる。
裏柳が孕みたいと言うなら孕ませたいし、自分だって裏柳との子供を欲しいと思う。だが子供が出来たら裏柳を白の王国へ帰さなければいけないのだ。
「王、海の人魚に意見を仰いでは? あの者は長生きですし、何か妙案を教えてくれるかも知れません」
そう、提案したのは羊である。
「あ、ああ。人魚か……」
漆黒は浮かない表情だ。
「確かにあの人魚は博識だし。何か知ってるかもしれないな。よし、ワニを連れて……」
「ワニは川は泳ぎますが、海はちょっと……」
「それもそうだな。解った一人で行ってくる」
うむと、頷く漆黒。
膳は急げと今出かけると言う。
「裏柳は、桃と仲良く待っていてくれ」
「はい、お気をつけて」
漆黒は瞬間移動したらしく、直ぐに姿を消した。
本当に人魚居るんだぁ。と、裏柳は少しドキドキしてしまう。
「さて、では裏柳様は桃さんとお昼ごはんにしましょうか」
羊はそう言うと、裏柳を連れて城の中に戻るのだった。
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