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第48話
裏柳が桃の部屋を訪れると、桃はワニと仲良くなっていた。
「さっきは貴方が作ってくれたご飯に酷い事をしてしまってごめんなさい」
「いえいえ、桃さんは何がお好きなんですか? 好きな物を作ります」
「何でも好きです」
そんな会話をしながら、桃にサンドイッチを食べさていた。
「あ、裏柳様」
此方に気付き、ハッとして立ち上がる桃。
「気にしないで座っていなさい。ワニと仲良くなったんですか?」
裏柳は桃の側に腰を下ろす。
特に座る場所も無いので床である。
「ええ、ワニさんが色々話してくれまして、黒の王様も悪い人では無さそうだったので…… さっきは取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
桃は申し訳なさそうな顔をしていた
。
「部屋も羊さんが来て綺麗にしてくれました。後でお礼を言わなければ……」
「そうですね」
あんなに硝子が散乱していたのに、今は綺麗である。
「裏柳様が入らしたので、僕はお昼ごはんを作って来ますね」
ワニはそう言うと部屋を出ていく。
「今日は天気も良いですし、お庭でも散歩させて頂きましょうか」
狭い部屋では気が滅入るだろうと思い、誘う裏柳。
桃が頷いたので、虎を呼んだ。
ワニとは仲良くなれたのに、桃は虎の顔が怖い様子で、裏柳に捕まってビクビクしてしまっている。
「虎も怖い人では無いんですよ」
そう説明しても、顔が怖いのはどうしようも無い。魔物は体もデカイし圧迫感がある。それに裏柳も虎の事はまだよく解らなかった。でも怖くは無いし、良い人そうに見えたから、良い人なんだろうと結論付けたのだ。
虎はビクビクしている桃を気遣い少し離れた所で二人の安全を見る事にした。
裏柳は桃と敷地内を歩きつつ、自分の思いを桃に説明する。
「桃は私と白亜が愛し合っていたと思っていると様だが、実は違うんだ。Ωの私が求められて拒絶してしまうのは同じΩである桃は信じれないだろう。だが、本当に嫌でね、初夜に逃げ出してしまったんだ」
「え?」
桃は思った通りに驚いた顔をする。
「白亜も私を必死に探してくれた様だし、愛してくれたと言うのに申し訳ないとは思うが、私は彼を弟の様にしか思えないし、他に好きな人も居た。あの時は誰だか解らなかったけど、それでも私は誰だか解らない人を求めて逃げ出したんだ。そして助けてくれたのが漆黒だった。彼と私は結婚していたらしい。何も思い出せないんだけど…… でも、私は漆黒が好きなんだって事だけはきっと覚えていたんだよ」
全てを話し桃を見詰める。きっと同じΩの桃なら自分の行動はおかしいと批難するだろうと思った。
同時に自国と他国の王から婚姻を求められる事は珍しいが、自国を優先させるべきであろう。でなければ愛国心を疑われる。
決して愛国心が無い訳では無いが、愛国心より男を取ってしまった自分は、やはり愛国心が無いと思われても仕方ない。
「裏柳様!!」
ギュッと桃に強く手を握られる。
ああ、怒られる。罵倒されると思った。
「素敵です!!」
「え?」
素敵です??
「裏柳様は忘れてしまっていても漆黒様に操をお立てになったんですね! 素晴らしいと思います。桃は裏柳様の味方です!」
桃は裏柳の言葉に感動していた。
白の王国では閨でΩの発情を促す香りを焚くと聞いてた事がある。
と、言う事は裏柳はΩの本能を打返す程、漆黒を愛していたと言う事である。
そんなに深く愛しているのだ恋を応援したいと思うのは普通である。
「有難う桃。桃がそう言ってくれると俺も嬉しい」
ニコッと笑う裏柳。
ふぁ、美人の笑顔!! 相変わらず素敵だわ。
実は桃の初恋は裏柳だったりする。
「裏柳様ー、桃さーん、お昼ごはんですよー」
羊が呼びに来たので、二人で室内に戻る。
お昼ごはんは二人共沢山食べられ、ワニもニコニコであった。
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