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第50話

 城に戻った漆黒は、裏柳に説明し、庭の花を一緒に選ぶ事にした。  自分が居ない間に桃も落ち着き、家臣たちと仲良くトランプゲー厶等をして遊んでいたから安心する。  カモメはフラミンゴと鳥族同士、やはり話が合うのだろう。仲良く世間話しをしている。  ワニには自分の夕食は軽食程度にしてもらい、カモメを夕食に誘った事を伝える。  ワニも張り切って夕食を作ってくれる様子だ。   「人魚の王様は明日が誕生日なんですね」 「ああ」  裏柳と選んだ花は無難に薔薇である。長の好きな花を聞いておけば良かったが、うっかりしてしまった。  珍しい青い色の薔薇を選ぶ。  花言葉も『夢は叶う』だし、無難だろう。 「お誕生日カードも付けた方が良いでしょう」 「そうだな。裏柳が書いてくれ」  裏柳は字が上手だ。 「あと、こっちは裏柳に……」  ついでで悪いが、緑色の薔薇の花束を渡す。裏柳の髪の色で選んたが、花言葉も『希望を持ち帰る』だ。縁起を担ぐ意味でも良いと思った。 「有難うございます。此方には漆黒様からカードを付けて頂きたいですね」 「様はよせ、他人行儀で嫌だ。俺達は夫婦なんだぞ? 言葉遣いももっと砕けて欲しい」 「失礼では?」  いくら妃と言えど王には敬語で喋るものだ。  呼び捨てにしたり、砕けた様な言葉遣いをするのは不敬である。 「俺が良いと言っているんだ。良いんだ! 俺が良いと言うのに敬語で話続ける方が不敬だと思うがな。俺の命令は聞けないのか?」  ムッとした様子の漆黒。少し不貞腐れた様子にも見える。  なんだか可愛く見え、裏柳は微笑んだ。 「では、漆黒と呼びます」 「敬語も嫌だ」 「じゃあ、漆黒。ガード書いて」 「了解した」  フフッと微笑む漆黒は裏柳の手を掴むと、一緒に城に戻る。  そろそろ夕食の時間だろう。  夕食を終え、自室戻ると海の宴に出かける準備をする漆黒。  カモメは外で待ってくれている。  服装等は裏柳に選んで貰った。  シャワーを浴びて体を綺麗にした漆黒は。髪をいつもの簪で上げていた。  何だか裏柳にはなつかしく見える。  簪を解いて髪を乾かす漆黒。  裏柳は漆黒が置いた簪を揺らす。  チリン、チリンと、鳴る鈴。  少し変わった音だ。  すごく懐かしい音。何か、思い出せそうだった。 「その簪が気に入ったならお前にやる」  漆黒は魔法で髪を乾かし、裏柳が選んでくれた服に袖を通す。  正式な場で使う方の髪飾り着けた。 「わぁ、素敵。いや、普段から素敵だけど。素敵です。凄く綺麗!」 「有難う」  正装した漆黒は光り輝く様で、裏柳は褒めちぎる。  だが、般若のお面で顔を隠してしまうので勿体なかった。 「この鈴の簪は漆黒が着けているのが良いと思うので頂けません」  裏柳は漆黒が置いた簪しを、大事に鏡台に片付けた。  まだ敬語が抜けきらないが、素で喋ろうと努力はしている様なので、漆黒は指摘せず、頭を撫でる。 「カモメが待っていますので。はい、薔薇を持って。これはカードです」 「有難う」  裏柳は恥ずかしかったのか、青い薔薇を漆黒に持たせると、書いたカードを差し出してくる。   綺麗な字で『長のお誕生日を心からお祝いすると共に、ますますのご健康とご繁栄をお祈り致します』と丁寧に書かれている。 「それからこれは漆黒に……」 「俺にも?」  裏柳はカードをもう一枚出す。 『漆黒へ。愛しているから早く番にしてください』  そう書かれていて、漆黒はフフッと笑ってしまう。 「今はこれだけで許してくれよ」  漆黒はそう言って裏柳の額にキスをする。 「随分子供騙しですね」 「まぁ、そう言うな」  ムスッとした様子の裏柳に、自分もカードを差し出した。 「後で緑色の薔薇に刺しておけ」  漆黒はそう言うと、手を振って窓から出ていく。  カモメの背中に乗って出かける様だ。 「お気をつけて〜」  裏柳は漆黒を見えなくなるまで見送った。  それからカードの内容を確かる。 『戻って来てくれて有難う。愛しているよ』  と、書かれている。  緑色の薔薇に刺すのはまた今度にして、今日は枕元に置いて寝る事にする。  裏柳は大事にカードを抱きしめた。

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