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5.コーディネート1
中条家のクリスマスは忙しい。
イベント好きな中条ホールディングスの代表ーー晴太郎の父親が、取引先の客や自社の社員を招いて盛大なパーティーを開く。
大きなホテルの披露宴会場を貸し切って、食べ放題飲み放題の立食パーティー。社員やお客様に日頃の患者を伝えるためのものだ。もちろん、中条家は全員参加する決まりである。
パーティーは夕方から始まる。それに備え、晴太郎は昨日と同じように着て行く服を選んでいた。
「七海、これはどうだ? この前父さんに買ってもらったこのアルーマニーのダブルジャケット!」
「……まあ、良いでしょう」
晴太郎が見せてきたのは、紺色に薄いストライプが入ったダブルジャケット。ぱっと見ただけですごく上品だということが分かる。
今回は高校生のお出かけではなく、社長が主催するパーティーだ。ハイブランドのスーツを着て行っても問題ないはず。それに買ってあげたものを着て行った方が社長も喜んでくれるだろう。しかしどうしてダブルジャケットのスーツなんて買ったのだろうか。自分はダブルジャケットなんて身につけたことがないのに。
「シャツとネクタイはどうしますか?」
「えー、ネクタイ……制服の偽物ネクタイじゃ駄目か?」
「駄目です。良いスーツを着るんですから、良いネクタイを身に付けてください」
晴太郎はそう言うと不満そうに顔を顰めたが、すぐに観念してネクタイを選び始めた。ちなみに、制服の偽物ネクタイとはシャツ襟に引っ掛けるだけのなんちゃってネクタイである。結ばなくて良いので楽なのだが、パーティーには相応しくない。
「どれがいいと思う?」
「これはどうですか?」
七海が選んだのは二重襟のシャツと水玉模様の深いブルーのネクタイ。紺色スーツに合うようにと選んだが、また無難すぎてつまらないものを選んでしまったかもしれない。
「うん、良いじゃないか!」
鏡の前で合わせながら晴太郎は満足そうにきている。彼がそう言ってくれるのであれば、それで良い。
あとは以前、晴太郎が衝動買いした地球儀模様のカフスボタンとロケットの形をしたネクタイピンを付けて、ネクタイの色に合わせたチーフを胸ポケットに入れたら準備は完了だ。
「おお、完璧だな! このピンとカフス買って良かったなあ」
「はい、とてもお似合いですよ」
一通り簡単に身につけ、姿見の前でくるくる回って確認する。身長が伸びたのでサイズが合うか心配だったが、社長はしっかりそこまで考えて贈ってくれたようだ。
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