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10.変化6
腕の中の晴太郎は、確実にあの時より成長している。身長も伸びたし、背中も大きくなった。声も以前より低くなった。それらは晴太郎が確実に大人の男性へと近づいている証拠。
自分の同じ男性に近づいているのは分かっているのに、七海は晴太郎が可愛くて仕方がない。今だってそうだ。その可愛らしい痴態を目の当たりにし、ごくりと喉が鳴る。
腕の中で悶える姿、首筋を滴る汗、熱の籠った吐息。これらが全て自分の手で与えたものによってそうなっていると思うと、ゾクゾクとした感情が込み上げてくる。
おかしい。いつから自分は、主人に対してそのような感情を持つようになってしまったのか。
以前までは我慢できた。どんなに可愛いおねだりをされても、どんなに色っぽい声で名前を呼ばれても平常心を貫くことが出来た。しかし、今日はそうではない。
最初は恥ずかしいから顔が見えないようにしたのに、今では顔が見えないのが残念で仕方がない。
「く、ぅ……あぁ、ななみ……も、出るっ」
吐息混じりの声で名前を呼ばれるのが堪らない。ドクン、と下腹部に熱が溜まるのを感じた。
これはやばい。そう思った時には遅かった。ゴリ、と固くなった自身の剛直が、しっかりと晴太郎の腰に当たってしまう。
「ふ、え……? な、なみ……?」
驚いた晴太郎が振り返って七海を見上げた。ばっちり目があった。七海はこの時、初めてこのような行為中の晴太郎の顔を見た。
眉尻をの下がった眉、うるうるした瞳、赤く染まった頬。そして、浅い呼吸を繰り返すぷるっとした唇。普段は凛とした主人が、こんな蕩けそうな顔で自分の愛撫を受けていたなんて。自分の愛撫が、今の主人の蕩けた表情を作っていると思うと、さらに触れたくなってしまう。
「ななみ、どうした……んむ、ぅ!」
触れたい、と思ったらもう駄目だった。
汚れていない方ので晴太郎の後頭部をしっかりと掴み、噛み付くような勢いで唇を重ね合わせた。
「ふ、ぅ……んう……っ、ん、ぅ」
最初は驚きと緊張でガチガチに強張っていた晴太郎の身体だったが、七海が優しく頭や背中を撫でまわすと、徐々に力が抜けていくのが分かる。そろり、とゆっくり晴太郎の腕が七海の背中にまわされ、ぎゅっと着ていたシャツを掴んだ。なんだその仕草、可愛い。
晴太郎の身体から緊張が消え去ると、キスはどんどん変化していく。押し当てるだけのキスから、ちゅっと音を立てて啄むようなキスへ。そして、濃厚な貪り合うようなキスへ。
薄く開いた唇の隙間からぬるりと舌を侵入させ、奥に縮こまっていた彼の舌を引っ張り出して舌を絡める。夢中になってキスをしているうちに脱力してしまったからの身体を、布団の上へそっと押し倒した。
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