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10.変化7
布団へ押さえ付けるような体勢でキスを続ける。晴太郎の腰がゆるゆると揺れている事に気付いた。そういえば、まだイかせてあげていなかったな、と七海は彼の張り詰めた肉茎へ手を伸ばす。
「んぐっ、んぅ、っ、んんーーっ……!」
透明な蜜で汚れた肉茎をくちゅくちゅと素早く扱くと、晴太郎はくぐもった声を上げる。それに構わず扱き続けると、彼は大きく腰を震わせ派手に精液を吐き出した。ぴゅ、ぴゅと勢いよく飛び出したそれは、互いの着ていたシャツをべっとりと汚す。
ぎゅっと七海のシャツを握っていた手から力が抜け、ぱたりとシーツの上に落ちた。それに気付いた七海は、はっとして晴太郎の唇を解放する。涙と2人の唾液でべしょべしょになった彼の顔を見て、さあっと血の気が引いた。
「は……っ、坊ちゃん……?!」
ーー何をした? どうして? 大事な主人に、なんて事を……。
晴太郎は脱力した身体を布団に預けたまま、薄い胸を上下させ浅い呼吸を繰り返している。
「は、ぁ……っ、な、なみ…………」
薄く開いた唇からから、ちろりと赤い舌が見えた。七海はごくりと息を呑む。彼の濡れた唇から、赤く染まった頬から、潤んだ瞳から目が離せない。熱い息と共に吐き出された自分の名前に、ぎゅうと胸が締め付けられる。
ーー駄目だ、分かっている。駄目だ。彼にこれ以上入れ込んではいけない。
頭の中で駄目だとガンガン警報が鳴り響く。しかしそれとは裏腹に、心は晴太郎を欲している。もっと、もっと晴太郎が欲しい。彼の笑顔、温かさ、愛情、ぜんぶ、もっと、すべてーー……。
冷静になれ、と七海はぎゅっと目を瞑った。
もう一度彼に触れたら、きっと元の関係に戻れなくなる。元の主人と従者という心地良い関係性が壊れてしまう。
七海が、ここで止まらなければならない。
だって、晴太郎は嫌がらない。七海が触れる事を、欲する事を拒まない。
七海は彼が自分にどんな気持ちを抱いているか気付いている。気付いているからこそ、気付かないふりをしてずっと今の関係を守って来た。
「……っ、七海……」
守って来た大事な関係が、今壊れそうになっている。
そろり、と晴太郎が七海に向かって両腕を伸ばす。そっと顔を包み込むように頬に触れた。
「もっと…………キス、しろ」
目を開くと、晴太郎がじっと七海のことを見つめていた。
熱の籠った、愛する人を見る瞳で。
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