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18.彼の場所へ2
「…………苦手なんです」
「苦手?」
「……絶叫マシンが」
「えっ、そうだったのか」
「……乗ると、いつもこうなるんです……子供の頃から、ずっと」
七海は絶叫系のアトラクションが苦手だったようだ。
幼い頃からずっと苦手で、乗るとフラフラして気分が悪くなってしまうらしい。今みたいに。
「苦手なら言えよ! 分かってたら乗せなかったぞ!」
「すみません! ずいぶん前のことだったので……もう平気だと思っていました……」
「あーもう、お前はいつも無理ばかり……何か飲み物買ってくるから、そこで待ってろ!」
七海はこういう奴だった。家族旅行で仙台に行ったときもそうだったが、いつも周りの人を優先して自分のことは後回し。今だって、晴太郎がジェットコースターに乗りたいと言ったから苦手だと言わなかったのだ。
分かっていながら気付いてやれなかったのも悔しい。自分にくらい、そういうこと言ってくれたっていいじゃないかと晴太郎は思う。
自販機でペットボトルの水を買って、七海のもとに戻る。時間が経ったせいか、ジェットコースターを降りた直後よりはいくらか顔色が良くなっていた。
水の入ったボトルを渡して、彼の隣に腰掛ける。自分用に買った炭酸のジュースのボトルを空けると、プシュッと音がした。
「……すみません、晴太郎様。私とこういう所に来ても、楽しくないですよね……」
「え? 何言って……」
「せっかく来たのに、絶叫にも乗れないし……来る前に、ちゃんと伝えるべきでした……」
落ち込んでいるのか、いつもはピンと伸びた背筋が丸まってしまっている。絶叫マシンくらいで、そんなに謝らなくていいのに。
「楽しくないわけないだろ。俺は、お前とここに来たかったんだ」
自分と行っても楽しくないのではないかと、渋る七海を無理矢理ここに連れてきたのは晴太郎だ。七海と一緒に居ることに意味がある。絶叫マシンに乗れるか乗れないか、そんなことは二の次だ。
「夢の国は、絶叫マシン以外にも楽しめるものがたくさんあるだろ? お前の好きな甘い物だっていっぱいあるから、そういうので楽しめばいい。だから、謝るな」
「晴太郎……ありがとうございます!」
落ち込んでいた七海の顔が、ぱあっと明るくなった。やはり、好きな人にはそういう顔をしていてほしい。
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