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19.会いたかった2
晴太郎の元から離れてわかったことがある。
——自分はかなりの依存体質だったらしい。
中条家のために、晴太郎のためにと働いていた頃が懐かしい。あの頃はよかった、と心の底から思う。
晴太郎のために家の掃除をし、晴太郎のために料理をする。ぜんぶ、なんでも晴太郎のため。彼の喜ぶ顔が、七海の心を満たしていた。
晴太郎が取り上げられてしまい、掃除も料理もする意味が無くなった。何をしても心が満たされない。
晴太郎と住んでいたときは部屋を綺麗にして、毎日料理もしていたのに。一人暮らしの家は、散らかり放題。キッチンは使われた形跡がない。シンクにはカップ麺や弁当の容器が置かれているだけ。我ながらひどい生活をしていると思うが、改善する気が起きなかった。
仙台支店の人たちに、七海が御曹司のお世話係をしていたことは伏せられているらしい。どこの誰が言ったのか分からないが、支店の人たちからは『恋人に振られて仙台に異動になった可哀想なやつ』と認識されているようだ。
ひどい生活をする七海を見兼ねた上司が、『恋人でも作りなさい』と色々な場に連れて行ってくれた。街コンや高級ラウンジ、相席居酒屋や街のバーなど。酒が飲めない七海には、縁のない場所ばかりだった。
そのうちのひとつの、街の喫茶バーで晴太郎に似た青年と出会い、少しの間付き合った。
もう二度と会えないなら、想っていても意味がない。別の誰かと付き合えば、晴太郎のことは忘れられる。そう思ったのだ。
七海はもともと同性愛者ではないので、男性と付き合うのは初めてのことだった。彼との交際中は多少まともな生活をしていたが、結局長続きせず、別れてしまった。
『壮介さんが好きなのは、俺じゃないよね?』
別れ際、彼にそう言われて初めて気付いた。
晴太郎を忘れるために付き合ったのに、結局忘れられず、似ている彼を代わりにしようとしていた。
——彼は晴太郎に似ているだけで、晴太郎ではない。晴太郎の代わりは、どこにもいないのだ。
そんな簡単なことにも気付けず彼を傷付けて、この交際は終わりを告げた。
それからはまた元の生活に逆戻り。しばらく駄目だと思われたのか、上司から恋人探しの誘いが無くなった。
どれだけ仕事に没頭しても、恋人を作っても駄目だった。七海の心から晴太郎は消えない。晴太郎を愛する気持ちは消えない。七海の心に深く根付いた愛は、彼のことを思い出すたびにさらに奥底へ根を張っていく。枯れることなく複雑に絡んで、ぎゅうぎゅうと心を締め付ける。
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