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20.隣にいること2
晴太郎が寒い寒いと駄々を捏ねるので、しぶしぶ窓を閉める。本当はもっと空気の入れ替えをして掃除機をかけたかったのだが、それは後回しにする。
部屋が暖まると、晴太郎はやっと行動を始めた。ベッドから降りて、洗面所へのろのろと歩いていく。彼が支度をしている間に、軽く食事でも作ろうかと冷蔵庫の中を確認した。
仙台に来てからまともに自炊をしていなかったので、ろくなものが入っていない。食パンとバターと牛乳、そして卵がひとパック。あとケチャップやマヨネーズなど、チューブに入ったものがちらほら。食パンがあったのが不幸中の幸いだ。
よく見ると、卵はひとつも使っていないのに、消費期限が迫っている。出来れば使ってしまいたいので、簡単にオムレツでも作ろうか。卵を4つほど割って少量の牛乳と一緒に混ぜる。ほぼ新品のフライパンを火にかけ、大粒のバターを落とす。ふわり、とバターの良い香りが広がる。
ほとんど使用していないオーブンに食パンを2枚入れて、タイマーをセット。あとは勝手に焼いてくれるので、その間にオムレツを作る。温めたフライパンに解いた卵を投入し、頃合いを見てくるりと巻いていく。
久しぶりに料理をしたが、案外覚えてるものだな、と七海は思った。
朝食は和食派の晴太郎に、オムレツを作る機会はそんなに多くはなかったが、ふわふわしたオムレツが上手くできた時、彼がとても喜んでくれたことをよく覚えている。あれから、オムレツは半熟でふわふわしたものしか作らなくなった。
「良い匂いがする……飯、作ってくれたのか?」
「はい、もう出来るので、座って待っていてください」
晴太郎が洗面所から戻ってくるのと、オーブンがチンと音を立てたのはほぼ同時だった。皿にパンとオムレツを乗せて、晴太郎が待つテーブルの方へ持っていく。
「すみません、最近買い物も何もしていなくて……これくらいしか作れませんでした」
「ううん、充分だ。ありがとうな」
いただきます、と言って彼はさっそくオムレツをひとくち。
「うん、美味い! 七海が作った飯、久しぶりだな……」
嬉しそうに食べる晴太郎を見て、七海はほっとした。ひとりになってから料理なんてしていなかったので、実は少し自信がなかったのだ。
「あ、飲み物いれてませんでしたね。コーヒーと牛乳くらいしかありませんが、飲みますか?」
「うん。パンだから牛乳がいい」
牛乳をとりにキッチンへ戻る。冷蔵庫から取り出し、一応消費期限を確認する。
記載されていたのは12月30日。今日は28日なので、問題ない。
今日の日付を思い出し、七海は重大なことに気付いた。
——本日12月28日は、晴太郎の誕生日だ。
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