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20.隣にいること7
*
晴太郎と一緒なら、家で一日中のんびり過ごすのも悪くない。しかし、冷蔵庫はほとんど空に近い状態で、洗剤やトイレットペーパーなどの日用品も尽きかけている。買い足さなければ、家でのんびり過ごすことも出来ない。なので、近所のスーパーに買い物に来た。
七海の作ったハンバーグが食べたい、という晴太郎のリクエストに応えるため、彼と一緒に食料品売り場をうろうろする。すると、見知った顔が声を掛けてきた。
「七海さーん。どうもー」
「あ、山田くん。こんにちは」
「こんちはーっす。あれ、こちらは……ご友人?」
ゆるいあいさつと共に現れた山田は、七海の隣にいる晴太郎にもぺこりと頭を下げた。
「こちらは、しゃ……」
社長の御子息の晴太郎様です、と言いそうになってハッとした。これは、言ってはいけないことではないだろうか。
山田は、七海が晴太郎の従者として働いていたことを知らない。ここで晴太郎と七海が一緒にいることは不自然極まりない。
それに、本当は七海は晴太郎に会うことを禁じられている身だ。もし晴太郎の正体が彼にバレて、七海と晴太郎が一緒にいると言うことが中条家の人たちに漏れてしまったら、大変なことになってしまう。
「しゃ?」
「えっと、従兄弟です!」
「ああ、従兄弟さんですか。どうも、山田と言います。いつも七海さんには、めちゃくちゃお世話になってますー」
「あっ、どうも。従兄弟のせ……セイタです」
七海の意思を汲み取って、晴太郎も話を合わせてくれたようだ。
「おっ、七海さんのとこは、今日はハンバーグですか?」
「そうです、よく分かりましたね」
「こう見えて割と料理するんですよ」
山田の持っていたカゴの中にはピーマンと挽肉、そして諸々の調味料が入っていた。惣菜類は一切入っていなくて、一人暮らしなのに偉いなと感心した。
「ピーマンの肉詰めですか?」
「当たりです! 本当はスープとか汁物系も作りたいんですけど、明日実家に帰るんで、消費し切れないからやめちゃったんですよー」
山田と話していて、ハンバーグ以外に何を作るか決めていなかったことを思い出した。せっかくなら、もう一品か二品くらい作りたい。
「スープか……いいですね。何を作ろうとしてたんですか?」
「ミネストローネです。トマト缶をガッと入れて、諸々の野菜をドバーッと入れるだけで、意外と簡単なんでおすすめっす」
「ミネストローネですか……それなら作れそうだな。せ……セイタくん、食べますか?」
隣にいる晴太郎に尋ねると、こくこくと顔を輝かせて頷いた。
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