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21.わがまま2

 どういうことだ、と記事を読んで見るがタイトルにある通り。六人兄弟の六番目と書かれているので、ここにある御曹司というのは晴太郎のことで間違いない。  捜索対象が七海の家にいる。ここ数日一緒に過ごしていたが、まさか、家出だなんて。 「せ、晴太郎様、起きてください! どういうことですか?!」  とにかく、本当の事を聞き出さなければ。すやすやと呑気に七海のベッドで眠る当事者を叩き起こす。 「……うんー? うるさいぞ、七海……まだ寝てても問題ないだろう……」 「いいえ、問題あります。起きてください。この記事はどういうことですか?!」 「うん……? ん? えっ、これは……あー、俺のことか」  だんだんと目が覚めてきたようで、晴太郎は七海からスマートフォンを受け取って記事に目を通す。大きな溜め息をついて、ベッドから起き上がった。 「……思ったより早かったな」  予想外の晴太郎の反応に、七海は驚きを隠せない。 「早かったって……家出というのは、本当なんですか?」 「……ああ、本当だ。スマホも自分で変えたから、誰も俺の連絡先を知らない。買ってもらったのを持っていると、GPSで居場所がバレてしまうからな」  混乱している七海とは違い、晴太郎は落ち着いている。まるで、こうなることを予想していたかのようだ。 「どうして、家出なんて……」  少しワガママな面はあるが、彼は家に迷惑をかけるようなことはしないはずだ。少なくとも、七海と一緒に過ごしていたときはそうだった。そんな彼が、こんな騒ぎを起こすようなことをするなんて。 「どうしてって……おまえに会いたかったからに決まっているだろう」  七海の問いに、少しむっとした様子で晴太郎が応える。   「何の理由も無く、おまえがいなくなるわけないだろ。家のことが絡んでるなら……こうするしかなかった」  七海がいなくなった理由、そして七海の居場所を晴太郎に教えてくれる人は誰もいなかった。不自然な情報の遮断に、違和感を覚えるのは当たり前だ。晴太郎は家のことが絡んでいると考えて、ひとりで七海に会いに行くことを決意したのだ。  家のことが絡んでいるなら、中条家の誰にもバレるわけにはいかない。だから結果的に、家出になってしまったと晴太郎は言った。

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