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2.一緒に1

 モデルルームを出た頃には、もう既に日が暮れていた。  晴太郎とは夕方に家、というざっくりとした約束しかしていなかったので、もしかしたらもうすでに七海の家にいるかもしれない。合鍵を渡しているので、外で待たせてしまうことはないはずだ。  結局のところ、今日は三浦に恋人としっかり相談しろと言われ、パンフレットを貰って帰ることになった。最初は気の弱そうな彼女が営業なんて、と思っていたが、なんとなく彼女が営業の仕事をしていることに納得した。彼女は情に熱く、人を思いやることができる女性だった。  彼女の言葉に背中を押され、晴太郎に同棲の話をしてみようと決めた。決めたはずなのだが、家が近付くと気持ちが揺らいでくる。断られたらどうしようと、不安になってしまう。  情けない話だが、晴太郎のことになると七海のメンタルは脆くなる。同棲を断られてしまったら——……考えただけで胃が痛くなる。たぶん、しばらく立ち直れない。  急いで買い物を済まして家に帰る。ガチャリ、と鍵を開けて中に入ると、部屋の電気が付いていた。玄関には、見覚えのある靴がしっかりと揃えて置いてあった。 「お、七海。やっと返ってきたな」  玄関廊下とリビングを遮るドアが開き、晴太郎が顔を出した。やはり、先に晴太郎が来ていたようだ。 「すみません、遅くなってしまって……」 「いや、いい。予定があったんだろ。急に来たいと言ったのは俺の方だ」  実は今日の会う約束は、昨日急に決まったことだ。晴太郎の仕事が前倒しで終わったため、今日の夕方から明日まで、急に休みが出来たらしい。ちょうど七海も会社が休みだったので、速攻了承して会うことになった。  晴太郎に会うのは1ヶ月ぶりだった。彼が貴重な休みの日にわざわざ自分のところに来てくれて、七海はとても嬉しかった。急でもなんでもいい。晴太郎に会えれば、七海はなんだっていいのだ。 「なんか荷物が多いな。どこ行ってたんだ?」 「パン屋と不動産屋に……」 「パン屋って、あの前に食べたところのやつか?」 「はい。晴太郎様も好きそうだったので、明日の朝食にと思って買ってきました」 「ああ、あれは美味かった!」  晴太郎は七海の持っていたパン屋の袋を覗いて嬉しそうにしている。喜んでくれてるようでよかった。 「不動産屋には何をしに行ったんだ? 引っ越すのか?」 「まだ確定ではないんですが……少し話を聞いてきたんです」 「そうか。どこに引っ越すか目処は立っているのか?」 「隣の駅の近くのマンションに……」 「隣の駅じゃ、ずいぶん近いな。大して場所が変わらないのに、何で引っ越すんだ?」  晴太郎は、引っ越しを別の土地に移動することだと思っているようだ。  この家と場所がそんなに変わらないなら、引っ越す意味はないのではないか、と晴太郎は首を傾げている。

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