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2.一緒に2

「隣駅の近くに新しくマンションが出来るので、買いたいなと思いまして……」 「マンション? 買うのか?」 「はい。まだ決定というわけではありませんが」 「七海はそのマンション、欲しいのか?」 「えっ? 買えるなら、欲しいと思っていますけど……」 「ふーん……」  マンションの話に興味を持った晴太郎は、七海が持ってきた不動産屋の袋からパンフレットを取り出して、ペラペラとページをめくる。 「へえ、いいじゃないか。しかし、ここよりずいぶん広そうだな」  今住んでいるリビングに小さい洋室が隣接したタイプの1LDKの部屋と比べたら、新しいマンションの部屋は3LDK、4LDKとかなり広い。私物が少なく、料理くらいしか趣味のない七海がそんなに広い家に住みたがる理由がわからない、と晴太郎は首を傾げる。  ——話をするなら、彼がマンションに興味を引かれている今がチャンスだ。 「……そ、そうなんです。広くなります。ですから……」 「あ! あのパン屋、近くなるのか。いつでも行けるな」 「はい、そうですね……」 「4LDKもあって何に使うんだ?」 「えっと、何に使うかは決めてませんが……部屋が増えるし、広くなるので……」 「うん……? どうしたんだ、七海」  七海が何か言いたそうにしていることに、晴太郎も気付いたようだ。七海の次の言葉を待ってくれている。  ——言え、言うんだ。  付き合いが長いのに、何を今更緊張しているんだ。バクバクと無駄にうるさく音を立てる心臓を、深呼吸をしてなんとか落ち着かせ、七海は意を決して口を開いた。 「いっ、一緒に、暮らしませんか……?!」  バサリ、とマンションのパンフレットが晴太郎の手から滑り落ちた。  まん丸に目を見開いたままフリーズしてしまった彼を見て、七海はしまったと後悔した。正直、ここまで驚かれると思っていなかった。このままでは、驚きすぎて混乱した彼に断られてしまうかもしれない。そんな嫌な予感が頭を過ぎる。  どうしよう、と内心焦っていると、驚きで固まっていた晴太郎が口を開いた。   「……いくらだ?」 「はい?」 「だから、七海が欲しい部屋はいくらだ? 買ってやる」  耳を疑った。目の前のこの人は、今何と言った? 金持ちなのは重々承知だが、驚きで混乱している状態の彼に、こんな高価なものをポンと買わせるわけにはいかない。 「その不動産屋に電話しろ。俺が今すぐ買ってやる。あと引越し業者の手配もしろ」 「ちょっと、落ち着いてください! あと、あなたが買うのは駄目です。私が買います!」 「なんでだ? 俺が買った方が早いだろ」

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