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2.一緒に3
普通のサラリーマンである七海と、天才ピアニスト兼色々な方面に楽曲提供している作曲家の晴太郎では、悔しいが稼いでいる額が違う。晴太郎が買った方が話が早いのだ。
けれども、七海もそれなりに稼ぐ会社員で彼よりずっと年上なので、自分で買いたい。少しくらい、年上らしいところを見せたい。
「よし、金は明日までに用意するとして……問題は引っ越しか? 山田に頼んでなんとかスケジュール空けて……」
「待って、待ってください! 話が先に進み過ぎです!」
「なんだ? お前が一緒に暮らそうと言ったんじゃないか」
「いや、まだ返事をもらってませんよ?!」
「む、そうだったか……? すまん、舞い上がりすぎた」
七海のことはそっちのけで、今すぐに引っ越しの手配をしようとする晴太郎を何とか落ち着かせる。
今の一連の行動で、晴太郎がどう思っているのか、彼からどんな返事が貰えるのか予想できてしまったが、七海としてはちゃんとした返事が欲しい。なので、改めて彼に聞く。
「一緒に、暮らしてくれるんですか……?」
「ああ、もちろんだ。七海がそう言ってくれて、すごく嬉しい」
——よ、よかった……
彼の返事を聞き、心の底から安心した七海は、目の前にいた晴太郎をぎゅうっと抱きしめた。
「わっ、どうした? 急だな……今日の七海は、少し変だ」
「はあー……よかった……断られたらどうしようかと……」
「断るわけないだろう。俺だって、お前が好きなんだから……一緒にいたいのは、同じだ」
なんて嬉しいことを言ってくれるのだろうか。少し照れながらも気持ちを正直に伝えてくれる彼に愛おしさが込み上げ、胸がぎゅっと締め付けられる。
勢いで抱きしめてしまったが、久々に触れた彼の体温と、ゼロ距離で感じる彼の香りに、正直に言うと少々ムラッとした。が、会って早々手を出す節操なしだと思われたくなくて、ぐっと堪えて抱き締めていた腕を離した。
「安心したら、お腹空いてきました。そろそろ夕食にしますか」
「んー……飯でもいいけど、その前に、さ」
少し不満そうな晴太郎の声。何がいけなかったのかと考える暇もなく離れた身体を再び抱き寄せられた。するり、と服の裾から彼の手が侵入し直に腰を撫でられ、その間にちゅ、と音を立ててキスをされた。残念ながらそれは唇に届かず、首筋に赤い痕を残した。
「……なあ、いいだろ?」
ずっと我慢してたんだ、と上目遣いで誘われて、ゴクリと唾を飲む。こんな可愛いおねだり、断るなんて男じゃない。
いいですよ、と言う代わりに、七海は晴太郎の唇にキスを落とした。
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