3 / 29
第3話
「うん、いつものアレだよね?」
本当はすごくドキドキするんだけど、でも赤ずきんくんが喜んでくれるなら、ボクも嬉しい。
だからボクは、コクンとうなずいて、赤ずきんくんに身をゆだねる。
「はぁ~、やっぱいいわ~」
……スリスリ、スリスリ。
ボクの身体を抱きしめて、顔を頭にくっつけて、スリスリされる。
......とても気持ちいい。
赤ずきんくんからシャボン玉の匂いがする......。
ボクはうっとりと目をつむって、赤ずきんくんが気のすむまでこうやってスリスリされるんだ。
本当はね、ボク知ってるんだ。
赤ずきんくんは、ボクの、この『ふわもこ』な毛が好きなこと。
だから赤ずきんくんは、みんなからイジメられているボクを助けてくれるんだってこと......。
赤ずきんくんはこうやってスリスリしてくれるけど、けっしてボクを好きなんじゃなくって、彼はただ、ボクの『ふわもこ』が好きなだけなんだ......。
そう思うと、ものすごく胸がズキズキする。
手当てされる前よりもずっと痛くなる。
赤ずきんくんを想っている胸も、考えている頭も、どこもかしこも、痛いんだ。
だけど、そもそもボクが抱く、『好き』っていう気持ちは、同性の赤ずきんくんに抱いちゃいけないものだから、だから仕方ない。
ボクが、勝手に赤ずきんくんを好きになっただけなんだもん。
こうしてボクは、赤ずきんくんには一生言えない想いを胸に秘める。
そんな毎日がずっと続くと思っていた。
だけど事態はある日、急に変わった。
お日さまが空高く昇るお昼。
村に住む大人たちがみんな森の集会で村を留守にしていた時だ。
ともだちにシェアしよう!