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第6話

 ボクは、赤ずきんくんを側にあった大きな木に隠し、鉄砲から自分を守るため、屈んだ。  震える身体を押し殺すため、お腹の底から唸り声を上げて、一気に男ふたりに向かって突進する。  クマさんたちはボクに向けて発砲する。  周囲に火薬の匂いと、それから振動が空気を振るわせた。  だけどボクはこの村で最強って言われているオオカミ族の長の息子だ。  こんな遅い弾には負けないっ!! 「赤ずきんくんは、誰にも渡さない!! ボクが守るんだっ!!」  ボクは地べたを蹴り上げ、空高く飛んだ。  クマさんの銃口がお日さまを狙う。  お日さまを見て目がくらんだのか、クマさんが一瞬、体勢をグラつかせたのをボクは見逃さない。  隙をついて、クマさんの顔面を思いきり蹴った。  隣のクマさんも同じようにして、宙に浮いている、もうひとつの足を伸ばし、蹴り飛ばす。 「ぐあっ!!」  クマさんたちは、最後に声を上げると、地べたに倒れたきり、動かなくなった。  ボク......勝ったんだ!!  弱虫なボクだけど、勝った。  赤ずきんくん、ボク、勝ったんだっ!!  喜びに打ち震えるボクは、大きな木に隠れさせた赤ずきんくんの前まで勢いよく走った。 「赤ずきんくん!!」  勝ったよ!!  ボクが手を伸ばせば......。 「っひぃっ!!」  赤ずきんくんは身体を震わせて怯えた声を出した。 「あ............」  赤ずきんくんは怖い思いをした。  だけどボクはそんなことも考えず、喜んでしまった。  自分のことしか考えてなかったってことに、ボクは今さら気がついた。  あんなに怖い思いをしたんだもんね、仕方ないよね。

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