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第5話
「今まで悪かった! 俺、オオカミ族は村を守らなきゃいけないのに、泣き虫じゃダメだって、決めつけていたんだ。狼は狼なのにな。これは、俺のエゴだ。すまなかった!!」
大きな声で、狐くんは狼くんに頭を下げ、ひたすら謝っている。
……狐くんは、やっぱり狐くんだった。
自分が悪いって思ったところはきちんと相手に伝えて謝る。
とても意志が強くて責任感がある彼だからこそできること。
ああ、やっぱり僕は、狐くんが好き。
どんなことをされても、この気持ちは変わらない。
「狐くんは、兎くんが大好きなんだよね」
狼くんはそう言うと、にっこり笑った。
――えっ?
『狐くんは、兎くんが大好きなんだよね』
思ってもみない場面で僕の名前を出されて、心臓がドキッてした。
どうして狼くんは、突然僕の名前を出したのだろう。
よくわからない。
だけど、聞きたい。
狐くんが僕のことをどう思っているのか。
でも、同時に怖いとも思ってしまう。
だって、もし、『嫌い』って言われたら、悲しくて死んじゃうかもしれない。
さっき、狐くんが好きだと再確認した後に、嫌われていると知るのはあまりにも残酷だ。
「はあ? 今はその話をしてるんじゃないだろう?」
「そういう話だよ。好きなんでしょう?」
狼くんの言葉に、狐くんは低く唸り声を上げた。
ドキドキ。
ズキズキ。
『好き』と言われるかもしれないという期待と、『嫌い』だと言われるかもしれない不安。
僕の胸は引き裂かれそうだ。
「う……ああ、そうだよっ! 悪いかよっ!! 赤ずきんみたいに、お前に取られるんじゃないかって、思ってたんだ」
「だってさ。良かったね、兎くん」
狼くんは、ちゃっかり僕がいることを知っていたらしい。
大声でそう言うと、木陰に隠れていた僕の方を見た。
……ねぇ、本当?
狐くんは、僕が好き?
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