3 / 136

夢か現実か①

「おいっ、結城。何してやがる。焼きそばパン買ってこいって言っただろうが。これ、あんパンじゃねぇか。」 「いや、焼きそばパン売り切れてて…。」 「あぁ?俺に逆らうんじゃねぇよ!」 どかっと蹴られる。 倒れている俺の頭をぐりぐりと足で踏みつける男。 「ねぇ?ユーキ君。僕、今ちょぉ暇なの。だから、腹踊りしてよ。庶民は社交ダンスの代わりに腹踊りするんでしょ?」 「誰がするかっ!!」 「え〜?なら退学だけどいいんだねぇ?」 涙目になりながら、腹を見せる。 「何してんの?うわっ、腹踊り?貧乏人は恥もなければプライドもないわけだ。これだから貧乏人はいやだね。」 お前らが脅したんだろ!! 「ねぇ、これ飽きてきたよ。そろそろチクっちゃおう。」 「確かにぃ、飽きてきたかもぉ。」 「こいつの退学が決まった時の顔どうなるか見ものだな。」 ひっひっひっと悪魔のツノを生やしていう三人衆は消えていった。かわりに目の前には担任と学園長が。 「君、アルバイトしてたみたいだね。分かっていると思うけど、退学だから。」 「ちょっ、待って下さい!!弁解の余地を…。」 「そんなものあるわけないだろ。さっさとこの学園から出て行くんだ。」 そんな、そんなぁ…。 『ジリジリジリジリ』 爆音量の目覚まし時計が響き渡った。 「ゆ、夢…。」 涙目になりながら、目を擦る。 夢だ。 夢だった。 良かった。 あれ、どこから夢なんだ。 きっとあの悪魔の三人衆がコンビニに来たところから夢だったに違いない。 よかった。 よかったぁぁぁ。 息を吐きながら制服に着替える。あの恐ろしい夢は忘れよう。あいつらが絡んだらロクなことが起きない。 貧乏人が珍しいとクラスで絡んできてガキみたいに貧乏人貧乏人と俺を揶揄う馬鹿どもだ。 「結城、おはよう。」 「あっ、母さん。おはよう。今日は夜勤じゃなかったっけ?」 「そうよ。だから久々に結城に朝ごはん作ろうと思って。」 ニコニコと笑う母さんの目の下にはクマが。いつも無理して笑ってる母さんにはやっぱり苦労はさせてやれない。 「母さん、俺のことはいいから寝てなよ。」 「そう?家族団欒もいいと思ったんだけどな。」 父さんはろくでなしの人間だった。多額の借金を抱え、ふらふらと遊びまわるような人。父さんが今どこにいるか分からないが、その借金は母さんが必死にかき集めて払ってる。 離婚しようにも父さんの居場所が分からず出来ないのだ。 警察や弁護士に相談なんてしてる暇も金もない。 母さんは中卒で働こうとした俺を止め、泣きながら高校へ行ってくれと言った。そんな母さんに働くなんて言えるはずもなく、奨学金で高校に入ることを決めた。 もともと勉強は出来る方だ。 簡単に奨学金をもぎ取ることが出来た。 「母さん、行ってくるな。」 「いってらっしゃい。」 母さん、また痩せたな。 バイト、もっと増やすべきかな…。 学校について授業を受ける。あの悪魔の三人衆はクラスにいない。学校に来ていないのか生徒会室で寛いでいるのか。 昨日の夢が夢じゃなく現実だったかもなんて考えていた俺がバカだった。そんなわけないよな。そもそもあの金持ち坊ちゃん共がコンビニに来るわけがない。 うんうんと頷いていると放送が流れた。 『1年A組 南結城、南結城。直ちに生徒会室に向かうように。』 きっと、偶然に決まってる。

ともだちにシェアしよう!