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母さん②
寮に入ったら母さんにしばらく会えなくなるのかな。母さん、俺が見てないと無茶するんだよな。
やっぱり寮に入るやめたほうが…。
いやいやでも入った方が母さんの役には…。
目の前にお茶が置かれる。
母さんは俺の前に腰を下ろした。
「それで?なんの話かしら。」
「あの…その…。」
「結城君が生徒会メンバーとして選ばれたんです。」
言い出しづらい。
そう思ってためらっていたのに、曽根は容赦なく話し出してしまった。こうなったら覚悟を決めなきゃ。
「え?そうなの?結城。」
「うん。」
「凄いことじゃない。どうしてそんなこと黙っているの。」
「今日決まったから。それでさ。あの…。生徒会に入ったら寮に入らないといけないんだ。寮はただで入れるし、食費代も出るらしい。俺一人でも大分母さんが楽にはなると思うんだ。」
「そう…。」
ふっと俯く母さん。
ああ、やっぱり母さんを一人にするのは。
「良かったじゃない。」
「え?」
「これで好きなだけ勉強できるわね。お母さんはね、心配してたのよ。いつも結城に無理させていて。生徒会に入れば進学も楽に出来るでしょ?」
「進学ってそんなっ。」
「お金の事は気にしなくていいわ。こっちでなんとかするから。結城が勉強好きなの知っているから。親としてなんとか大学に行かせてあげたかったの。でも、これで大学行けるかもしれないわ。」
「母さん…。」
母さんがそんなこと考えていたなんて思いもしなかった。大学に行くなんて夢のまた夢だと思っていたのに…。
「寮はいつからなの?」
「明日からって。」
「そう。寂しくなったらいつでも電話してくるのよ?」
「そんな遠くに行くわけでもないから。」
「俺も生徒会なんで、結城君のことはサポートしていくつもりです。」
「あら、そうなの。曽根君、結城のこと宜しくね?この子意外とドジなところあるから。でも、曽根君もいるなら安心ね。結城、頑張ってきなさい。」
その後少し話しをしてから母さんは仕事へ向かった。
「もう少し引き止められるかと思った。いいお母さんだね。」
「まぁな。俺をここまで育ててくれた自慢の母親だからな。あんまり無理しないで欲しいんだ。なぁ、たまになら戻ってきてもいいかな?母さんの様子を見にきたいんだ。」
「それくらいならいいと思うよ。みんなそんなに心狭くないし。」
「そっか。それなら良かった。なぁ、頼んどいて悪いとは思うんだけど、父さん見つけたら俺にも会わせてくれないか?母さんが父さんを許したとしても、俺は許せないから。一発くらい殴る権利あると思うんだよ。」
「そう言うのは楓君に言ってくれた方がいいかも。そこら辺は楓君がやってるから。」
「楓…ああ会長のことか。」
確かに、色々と説明してたの会長だったしな。会長に相談した方がいいのか。明日にでもしとこ。
「あっ、そう言えばさ、荷物ってどうすればいいんだ?」
「荷物なら必要なものだけ持っていけばいいよ。なんなら何も持ってこなくてもいいけど。」
「それはちょっと…。」
「まぁ、変に持ってきても使わないまま終わると思うけどね。」
まぁ、あんだけなんでも揃ってる場所なら何も持って行かなくてもいいんだろうけどさ。取り敢えず最低限持っていって、足りなくなったら取りに来ればいいか。そんな凄い遠いわけでもないし。
「じゃあ、明日、迎えにくるから。って言っても俺じゃないけど。」
「誰が迎えにくるんだ?」
「さぁ?知らない。」
知らないって。
まぁ、明日のお楽しみってとこか。
「今日はありがとう。助かった。」
「ううん。これからよろしくする仲だからね。明日は記念日になると思う。楽しみにしておくよ。」
記念日?
入居記念日ってこと?
それを聞く前に曽根は出て行った。
「なんか、不穏な空気が流れたな。なんなんだ。この違和感。俺、やっぱり選択間違ったのか…。」
明日になれば分かる。
俺は楽観視していた。
きっと大丈夫だと。
俺の人生が狂うことも知らずに。
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