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寮⑧

無駄に広いエレベーターに乗って一気に20階へ。 記憶がほとんどないとはいえ、自分が犯された場所に自ら足を進めるとは。というか、昨日のこともまともな説明を受けていない。 今からされるのか…? いや、それはそれで嫌なんだが。 「貧乏人で遊ぶのが趣味なのか。いや、貧乏人だからこそ下手に遊んでも問題ないのか。あー、嫌だいやだ。もう、帰りたい。」 チンッと鳴って扉が開く。 そのまま足を踏み入れるとすぐに広間があった。そこには長机が中央に設置されており、その上には沢山の料理が並べられていた。 呆然。 「え、なにこれ。」 横からパーンッと音が鳴った。びっくりして、音の発信源を見ると、早乙女がクラッカーを持っていた。その後ろには生徒会の面々も揃っている。 「なにこれ。」 もう一度、呟いた。 「歓迎パーティーだよぉ。わかるでしょぉ?」 いや、分からない。 こいつらが歓迎パーティーだなんてそんな…まさかだ。 「驚いたぁ?」 そりゃあ、もちろん。 心臓が吹き飛ぶかと思った。 「鈴太郎、はしゃぐのはそのくらいに。結城、今回は君を思ってパーティーを開くことにしたんだ。まぁ、パーティーと言っても我々生徒会メンバーだけしかいないけどね。どうだろうか。君もこういうのが好きそうだと思ったんだけど。」 先も何も、驚いた。 驚きを吹っ飛ばして頭が痛い。 なんだよ、こいつら。 昨日は俺を酷い目に遭わせときながら、今日は歓迎パーティーだって。 馬鹿だろ。意味わかんねぇ。本当、金持ちの考えることは理解できない。 「クック、くはっあはははは。」 もう大爆笑。 笑いが止まらない。 「お前ら、頭おかしいよ。」 「俺らをおかしくしたのはオメェだよ。だから責任取りやがれ。」 噛み付くように俺の頬を噛んだ財前。俺が財前を吹き飛ばす前に、何故か副会長が財前の首根っこを掴んで放り投げた。 「チッ…。」 「規則違反だ。」 無表情で呟く副会長に財前は睨み付ける。一触即発。そんな事態を止めたのは会長。 「今日は結城君を僕たちに慣らす為の交友会だよ。あまり場の雰囲気を壊さないでくれ。」 会長は強い。 2人とも揃って大人しくなった。 「結城、君のために沢山の料理を用意したんだ。君の憧れの大トロ寿司や和牛を使った料理もある。今日はビッフェ形式だ。君の好きなものを選んで食べるといいよ。」 大トロ…和牛…。 ヨダレが出てくる。 「食べたい、たべたいっ!」 「じゃあ、一緒に取りに行こうかぁ。」 コクリと大きく頷いた。 もう、その後は最高だった。 初めての和牛。 なんだっけ星5ランク的なあれ。 あと、身の太い大トロ寿司は甘くてトロトロですっごく最高だった。 そして、チョコレートがぶわぁぁぁって広がるチョコフォンデュ。マシュマロにいちご、バナナをコーティングして食べたらすんごく美味しかった。 あとあと、何種類のケーキも置いてあって、全部は食べられなかったけど、気になったのは全て食べ切ってしまった。初めて自分が食欲旺盛な若者で良かったと思った。 「わぁ、お腹ぽっこりぃ。」 「デブんなよ。ちゃんと運動しろ。」 早乙女や財前にふっくらしたお腹を揶揄われ、そんな毎日こんなに食わないと反論した。 最近、バイトやらなんやらで追い込まれていたから、気晴らしになった。 そして俺は昨晩自分の身に何があったかを、この5人の男達に身体を狙われていることをすっかり忘れたまま床についた。 俺は知らない。 この後、この男達に何をされるかを。 男たちが言った、 「今日“は”何もしない」 という意味を。 次の日に身をもって知ることになる。

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