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財前皐⑤
結城を抱きしめ、自室に入る。
放心状態の結城は全く暴れない。先ほどの嫌々と言っていたのが嘘のようだ。ベッドに沈めて、再度押し倒す。
そうしてやっと、目が覚めた結城は涙目で俺を見た。
こいつは忘れている。
高校でやっと再開したのに、こいつは俺に気付かなかった。
俺は、俺はずっと忘れなかったのに。
昔から俺は何でも出来た。
出来ないことなんてなかった。
ただ1人、粋がっていた俺を鼻で笑ったのが結城だった。
悔しかった。
だから、あいつを負かしてやろうと思った。
だけど、あいつは俺を見ていない。
あいつが戦っているのは父親だった。
クソみたいな父親だった。
俺はあいつに見てほしかった。
1ヶ月かけて、漸くあいつは俺と一緒にいてくれると言った。
約束した。
約束したのに、あいつは俺の前に姿を現すことはなかった。
仕方がない。
それは理解していた。
家の事情。
たぶん、あの親父が蒸発したんだろう。
それでやむを得なく引っ越すことになったのだと思う。
仕方がない。
それでも、言って欲しかった。
言ってくれなかったってことは、きっとあいつは俺のことを対して思ってはなかったってことだから。
その後、俺の前にも父親が現れた。
俺は隠し子だ。
浮気して出来た子供。
援助金で俺と母は生きていた。
だが、本妻の方に子供ができなかったらしい。引き取りたいとのことだ。
断ることは出来なかった。
それでも良かった。
金持ちになれば、あいつを自分の手の中に入れられると思った。囲えると思った。
実際そうだ。
こいつは今ここにいる。
何年、かかった。
ここまで来るのに。
本妻に疎まれ、周囲から嫌悪され、それでも今の地位に立った。もう、逃がさない。あの時みたいにふらりと消えることなど許さない。
「もう、絶対に離さない。」
無理やりねじ込んだ舌で荒らす。唾液が混ざり合い、もうどちらのものなのか分からない。孔に指を入れ、もう一度慣らしてから、再度挿入する。いやいや言うわりにすんなり入った。その顔は快楽で染まっている。
「気持ちいいか。」
「やっ、もぉ、いやぁ…。」
獣のように腰を振る。メスイキには少し端正がなさ過ぎる。仕方がない。それでも一緒にイけるように扱いて、そのまま唇を奪ったまま共に果てた。
パタリと動かなくなった結城の唇に触れるだけのキスをする。
次犯すときは、昔の話をしよう。
あの夏の日の出来事を…。
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